なぜ「ひとぱん工房」は広告費ゼロで素敵なスタッフが集まるのか?小さなパン屋が大切にすること

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こんにちは、「ひとぱん工房」のひとみです。

私たちのブログをご覧くださっている方はご存知かもしれませんが、現在、東松戸への新店舗移転に向けて準備を進めています。

それに伴い、一時期スタッフさんの募集をしておりましたが、現在は一旦停止させていただいています。

今回の記事では、

  • 新店舗の準備状況と、スタッフ募集を一時停止している理由
  • 「ひとぱん工房」が広告媒体を使わずにスタッフ採用がうまくいっている背景
  • 私たちが商品以上に大切にしている「理念」や「想い」の発信について
  • お客様との対面でのコミュニケーションが、私たちの最大のやりがいであること

など、普段はあまりお話ししない、お店の裏側や私の「想い」について、少し深く掘り下げてお話ししたいと思います。

新店舗の準備と、スタッフ募集を一時停止している理由

最近、お客様からも「新店舗はどうなりますか?」とご質問いただくことが増えました。

新しいお店では、陳列スペースが今よりも広くなる予定です。
今の店舗も、かなりギチギチに商品を詰め込んでいる状態なので(笑)、これだけでも嬉しいです。

その新しく確保できる「ちょっと」のスペースに、新しいパンや企画商品を並べていきたいなと、今からワクワクしながら構想を練っているところです。

そして、その新店舗に向けてスタッフさんの募集をさせていただいておりましたが、こちらは現在一時停止させていただいています。

「新店舗で人手が必要なのに、なぜ?」と疑問に思われるかもしれません。

これには、私なりの大切な理由があります。
それは、「今、新しく入ってくれたスタッフさんの育成に集中したい」からです。

ありがたいことに、私たちの思いに共感していくつかご応募をいただき、新しい仲間が増えました。
ですが、次々と新しい未経験の方をお迎えして、ゼロから教えていく…という余裕が、今の私には正直なところありません。

というのも、パン作りの「技術的」な部分を具体的にお教えできるのが、現状では私一人しかいないんです。

もし、他にも技術指導ができるスタッフが2人、3人といて、「ここはこうやってね」とポジションごとに教えられる体制があれば話は別なのですが…。

さらに、今の店舗はご存知の通りとても「狭い」という物理的な問題もあります。
作業スペースに3人、4人と入ってしまうと、もうそれだけで動きが取れなくなり、一気に作業効率が落ちてしまうんです。「作業したいけど場所がない」という状態ですね。

本当は、一つのポジションを二人羽織のように手取り足取りお教えしたいのですが、狭くてそれはできない…。

こうした理由から、今は新しく入っていただいたスタッフさんの育成に全力を注ぐため、募集をストップしています。

もちろん、本当はもっと仲間を募集したい気持ちでいっぱいです。
理想を言えば、週に3回くらい、フルタイムで製造に入ってくださる方(もちろんレジスタッフも)がいてくれたら…と思いますが、それはもう少し先の話。

本格的に募集を再開するのは、東松戸に移転して少し落ち着く、2026年3月半ばあたりからかなと考えています。その時は、また改めてお知らせさせてくださいね。

広告費ゼロでも素敵な仲間が集まる「ひとぱん工房」

今回のスタッフ募集に限らず、実は「ひとぱん工房」は、オープンしてから今まで、スタッフさんの募集で困ったことが一度もないんです。

これは、本当に本当に、ありがたいことだと思っています。

飲食店の経営者仲間から話を聞くと、「人が集まらなくて大変」というお悩みをよく耳にします。
多くのお店が、タウンワークのような求人情報誌やWEB媒体に、多額の「掲載料」を支払って募集をかけています。

中には、「掲載は無料でも、採用が一人決まったら何十万円」という成果報酬型のサービスもあるそうです。
ある社長さんは「人材募集だけで月に100万円くらいかけている」と仰っていて、それを聞いときは本当に驚きました。

でも、それくらい費用をかけなければ、なかなか人が見つからないのが現実だそうです。

正直なところ、100円、200円のパンを一つひとつ手作りして販売している私たちにとって、人材募集にそんな莫大なお金をかけることは、まったく現実的ではありません。

では、なぜ「ひとぱん工房」は募集にお金をかけずに、素敵な仲間が集まってくれるのでしょうか?

私たちは、そういった求人媒体を一切使っていません
募集をかけるのは、InstagramやYouTube、そしてこのブログといった、自分たちのSNSだけです。

それなのに、いつも「働きたいです」と手を挙げてくださる方がいて、時には「今はいっぱいでごめんなさい」とお断りすることもあるくらいです。

しかも、一度入ってくれたスタッフさんは、皆さん本当に長く続けてくださる方ばかり。
もちろん、学生さんが卒業のタイミングで辞めてしまう、といったライフイベントによる入れ替わりはありますが、それでも募集をかける頻度は、他のお店に比べて圧倒的に少ないと思います。

人手不足が叫ばれるこのご時世に、なぜこんなにうまくいくのでしょうか…。

私たちが発信するのは「パン」だけじゃない。SNSで伝える「想い」

この「不思議」について、うちのお店のSNS運用なども手伝ってくれているジャム兄さん(夫)と話していた時のことです。

ジャム兄さん:「やっぱり、うちの理念とかコンセプトとかを知って、共感してくれてるファンの方が多いんじゃないかな」

確かに、それはあるかもしれません。
私たちがこうしてYouTubeやブログで顔を出してお店の日常や考え方を発信していることで、「どんな人が働いているのか」という安心感に繋がっている可能性はありますよね。

普通の企業の募集ページだと、本当にこの人が働いているのかな?と思うような宣材写真や、もしかしてフリー素材かな?といった画像が使われていることもあります。
「職場の雰囲気はどうなんだろう?」という不安は、応募する側にとって絶対にあると思うんです。

その点、私たちは(良くも悪も)素の姿をさらけ出しています(笑)。

そして何より、実際に応募してきてくれたスタッフさんに話を聞くと、「YouTube見てます」「ブログ読んでます」「インスタ見てます」と、何かしらのSNS媒体を見てくださっている方が本当に多いんです。

これは、私たちが発信する情報を、お客様が「お客様」としてだけでなく、「お店のファン」としてもしっかりと受け止めてくださっている証拠だと感じています。

そこで私たちが意識しているのは、単なる商品情報だけを発信するのではない、ということです。

もちろん、「新商品が出ました!」「パンが焼き立てです!」といった情報も大切です。
でも、ジャム兄さんが言うには、「それだけだと、お客さんの記憶に残らない」。

そうではなく、

「このお店は、どういった想いでパンを作っているのか」
「リーダー(店長)が、どんな考えでこの場所を運営しているのか」

といった、お店の「根っこ」にある部分、つまり「理念」や「想い」をしっかりと発信していくこと

それが、時間はかかるかもしれないけれど(長いスパンになるけれど)、お客様の心にしっかりと届き、結果として「ここで働きたい」という思いにも繋がっていくのではないか。
私たちはそう考えて、発信を続けてきました。

「商売は“影”を売る」ということ

以前とある経営者の本に、このようなことが書いてありました。

商売っていうのは、“影”を売ることなんだよ

「影を売る?」
最初は何のことか分かりませんでした。

その方が言うには、お客様は「商品」そのものだけを買っているのではない、と。
商品に付随する「影」…つまり、「あそこに行ったら必ず何か美味しいものがある」「あのお店なら間違いない」といった、ふわっとした形のない「信頼感」や「期待感」

お客様がその「影」に強く惹かれたら、もう「新商品が出たから」という情報がなくても、「あそこに行けば何かある」という理由だけでお店に来てくれて、何でも買ってくれるようになる。

「そんなおとぎ話みたいな…」とその時は思いましたが、ハッとさせられることがありました。

それは、「ひとぱん工房」は新商品の販売率がとても高い、ということです。

私が「こんなのどうかな?」とポロッと思いつきで並べてみたパンも、定番商品と同じように、たくさんのお客様が手に取ってくださるんです。

これはまさに、いつもお店を目指して(リピートして)来てくださるお客様が、私たちが作ってきた「影」…つまり、「ひとぱん工房のパンなら美味しいはず」という信頼を買ってくださっている証拠なんじゃないか、と。

これこそが、お客様との間に築かれた「信頼関係」の表れであり、こんなにありがたいことはありません。

「理念」を発信するということ。パン屋である前に「人」として

「ひとぱん工房」を始めてから、私はずっと、自分の考え方やお店の理念をなるべく前面に押し出そうと意識してきました。

正直、「この人、なんかうっとうしいな」と思われているかもしれません(笑)。
「理念とか想いとか…ちょっと宗教みたいだなぁ」と感じる方も、中にはいらっしゃると思います。

でも、私はパン屋という仕事は、究極的には「人と人のお商売」だと思っています。

だからこそ、モノ(パン)の良さだけを伝えるよりも、私の「想い」が響く人がきっといるはずだと信じて、発信を続けてきました。

今の時代、パンなんてどこでも買えますよね。
コンビニでも、スーパーでも、美味しいパンが手軽に手に入る時代です。

そんな中で、わざわざ個人経営の小さなお店をやる意味って、一体何でしょうか?
私にとっては、そこに「想い」がなければ、やる意味がないんです。

私の考え方やパン作りに込めたストーリーに共感してくださる方が、
「ここのパンだったら、安心して家族に食べさせられる」
「このお店に来ると、ホッとする」
そんな「安心感」という名の「価値」を見出して、足を運んでくださることが、私の何よりの喜びです。

私の原動力。お客様からいただく「生の声」という宝物

私がこの仕事を続けていられる、最大の原動力。
それは、対面販売だからこそいただける、お客様からの「生の声」です。

インターネットが普及した今でも、直接、目の前のお客様からいただく言葉の力は、何物にも代えがたいものがあります。

「ひとぱん工房さんのパンを食べて、パンの概念が変わりました」
「うちの子、ここのパンだけは食べるんです」
「本当に美味しかったわ、また来るね」

こうした一つひとつの「生の声」が、私の「人間としてのやりがい」に、ダイレクトに繋がっています。

もしこれが、大きな工場でパンを生産していて、お客様の顔が見えず、声も聞こえない状況だったら…。
(もちろん、工場生産が悪いという意味ではありませんよ!)
きっと私は、この仕事を続けていられなかっただろうな、と感じます。

お客様が「美味しかった」と喜んでくれる。
だから、「明日も頑張って美味しいパンを焼こう!」と思える。

このシンプルな喜びの積み重ねで、「ひとぱん工房」は5年間歩んでくることができました。

なぜ今、「理念」や「想い」が大切なのか?

現代は、情報もモノも溢れかえっている時代です。
皆さんも日々感じていらっしゃると思いますが、スーパーに行けばたくさんの選択肢があり、インターネットを開けば無限の情報が流れてきます。

そんな中で、私たちが「何かを選び取る」基準は、少しずつ変わってきているように感じます。
単に「安いから」「便利だから」という理由だけで選ぶ時代は、終わりつつあるのではないでしょうか。

特に、ご家族の口に入る「食」に関しては、
「誰が」
「どんな場所で」
「どんな想いで」
作っているのかという、商品の「背景(ストーリー)」を重視する方が増えています。

もちろん、「安心・安全」であることは大前提です。
その上で、「作り手の顔が見える」ということが、何よりの「信頼」に繋がります。

だからこそ、私たちがSNSを使って、パン作りの日常だけでなく、私たちの「理念」や「考え方」を発信し続けること。
それは一見、遠回りに見えるかもしれませんが、お客様や、未来のスタッフさんと繋がるための、一番の近道だと信じています。

スタッフ教育で大切にしたいこと

今、私が募集を止めてまで集中している「スタッフ育成」。

私が新しい仲間に伝えたいのは、パン作りの「技術」だけではありません。
もちろん、美味しいパンを作るための技術は非常に重要です。それは一切妥協しません。

ですが、それ以上に共有したいのは、
「なぜ、ひとぱん工房はこのパンを作るのか」
「このパンを通じて、お客様にどうなってほしいのか」
という、「想い」の部分です。

スタッフ全員が同じ「想い」を持ってお客様と接し、パンを作る。
そうすることで、お店全体の「影」(=信頼感)がより強く、温かいものになっていくと信じています。

新店舗では、私だけが前に立つのではなく、スタッフみんなが主役になれるような、そんなお店作りを目指していきたいです。

おわりに

今日は、新店舗やスタッフ募集の話から派生して、私たちが大切にしている「理念」や「想い」について、たっぷりとお話しさせていただきました。

少し暑苦しい話になってしまったかもしれませんが(笑)、これが「ひとぱん工房」の核となる部分です。

新店舗の準備も、日々のパン作りも、お客様への感謝の気持ちを胸に、スタッフ一同頑張ってまいります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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ひとぱん工房
ひとぱん工房
国産小麦100%のパン屋
国産小麦100%にこだわり、熊本と北海道から厳選した小麦を使用する「ひとぱん工房」は、毎週土曜と日曜日のみオープンする手作りパンのお店です。東京や大阪の有名店で10年以上修行を積んだ女性店長が、香り高い素材を引き立てるこだわりの製法で丁寧に焼き上げています。砂糖はミネラル豊富な鹿児島県産の粗糖、塩には沖縄県産のシママースを使用し、素材の旨みを最大限に引き出したパンをお届けします。小麦の豊かな風味とふんわりとした食感が特徴で、どれも素材本来の味わいを存分に感じられると思います。
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