米粉パンが膨らまない?粉の変更で起きたハプニングと食パンのホワイトラインの秘密
要約
- 米粉の変更によるハプニング: 愛用していた米粉が終売に。新しい粉に変えた途端、米粉パンが膨らまなくなるというトラブルが発生しました。
- 東松戸移転後の嬉しい変化: レシピや機材は同じなのに、食パンやバゲットの仕上がりが劇的に向上しました。
- ホワイトラインの出現: 食パンが理想的な焼き上がりの証である「ホワイトライン」をまとって焼き上がるようになりました。
- バゲットの美しい気泡: 以前よりも中身(クラム)に大小の美しい気泡が入るようになり、酵母の不思議な力を感じています。
米粉パンが膨らまない!突然のハプニング
こんにちは、ひとぱん工房の店長、ひとみです。
いつも当店をご利用いただき、本当にありがとうございます。
実は最近、お店で大人気だった米粉パンに関する大きなトラブルがありました。
これまで長年愛用していた米粉(ミズホチカラ)が、突然終売になってしまったのです。
同じ熊本製粉の瑞穂パン用米粉へと切り替えることになり、「さあ、今日もふっくら焼き上げよう」と意気込んでオーブンに入れたのですが……。
焼き上がったのは、いつも通りのふんわりとしたパンではなく、まるで濡れおかきのようにペチャンコでガチガチの塊でした。
噛めば歯に詰まるようなねっちょりとした食感で、とてもお客様にお出しできる状態ではありません。「ご飯を食べたんだっけ?」と錯覚してしまうほどの、ただのお米の塊になってしまったのです。
グルテンフリーパンの難しさと粉の相性
なぜ、ただ粉を変えただけでこれほどまでに大失敗してしまったのでしょうか。実は、米粉パンの生地作りにおいて、粉の性質は命と言っても過言ではありません。
小麦粉には水を加えて練ることで「グルテン」という網目状の組織を作る性質があり、これが酵母の出すガスを包み込んでパンを膨らませます。しかし、米粉にはこのグルテンが含まれていません。(グルテンフリー)
そのため、米粉100%でパンをふっくらさせるには、お米のデンプンを傷つけない微細な製粉技術(でんぷん損傷率の低さ)や、生地の保水力をコントロールする絶妙な吸水率が求められるのです。
色々な配合を試し、試作を重ねましたが、どうしても新しい米粉ではうまく立ち上がりませんでした。
そのため、現在はやむを得ず米粉食パンは店頭に並んでおりません。
「小麦アレルギーがあるから、ひとぱん工房の米粉パンを楽しみにしていたのに」というお客様の声もいただいており、本当に心苦しい思いです。
現在は、再びグルテンフリーの米粉食パンでご提供できるよう、以前の、ミズホチカラをなんとか入手できないかと探しておりますので、今しばらくお待ちくださいませ。
東松戸への移転で起きた不思議な変化
米粉のトラブルで頭を抱える一方で、実は東松戸の新しい店舗に移転してから、とても嬉しい出来事もありました。
当店の看板商品でもある食パンやバゲットといった国産小麦のパンたちが、突然見違えるように美しく焼き上がるようになったのです。
デッキオーブン変えたから?とジャム兄からも聞かれたのですが、実は機材もレシピも、そして私の焼き方も、以前の店舗と全く同じです。それなのに、仕上がりのクオリティが格段にアップしました。
パンは生き物です。
もしかすると、新しい土地の環境や空気感が、私たちが育てている酵母(菌)たちにとって非常に居心地の良い場所だったのかもしれません。
見えない世界の話ですが、酵母たちがと喜んでいるような、そんな不思議なエネルギーを感じています。
食パンの理想「ホワイトライン」とバゲットの美しい気泡
具体的にどう変わったかというと、まずは食パンです。
移転直後は生地の力が少し弱く、型の中で四角く膨らみきらないことがありました。
そのため、生地の捏ね時間を増やしてグルテンの骨格を強化するなどの工夫をしてきました。
焼き上がった食パンの角には、くっきりと「ホワイトライン」が現れるようになったのです。
ホワイトラインとは、角食パンのフチ(角の部分)にできる、白く細い線のこと。
これは、オーブンの中で生地が元気に伸びて型の隅まで届き、あと一歩で角に触れるという絶妙なタイミングで焼き固まった証拠です。
過発酵でも発酵不足でも現れない、パン職人にとって理想的な焼き上がりのサインなんです。

そしてもう一つ、バゲットにも素晴らしい変化がありました。
バゲットをスライスしたときの断面(クラム)に、大小の美しい気泡(穴)がたくさん入るようになったのです。気泡がしっかり入るということは、生地にたっぷりと水分が含まれ、オーブンの中で一気に水分が蒸発して生地を持ち上げた証です。
以前はもう少し目の詰まった断面だったのですが、今はとても軽やかで、理想的なバゲットの表情を見せてくれています。

同じ材料、同じ作り手でも、環境一つでここまでパンの表情が変わる。
失敗も成功も含めて、パン作りの世界は本当に奥深くて面白いと改めて実感しています。
これからも、皆様に安心して楽しんでいただける国産小麦のパンや、納得のいく米粉パンをお届けできるよう、日々生地と、そして酵母たちと向き合っていきます。
新しいひとぱん工房のパンたちに、ぜひ会いに来てくださいね。






