【パン屋開業のリアル】6年間の経験を活かした新店舗計画!ひとぱん工房の移転準備、お話します
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、「ひとぱん工房」は、来年(2026年)に東松戸へ移転オープンする予定です。
現在はまだ新しいお店の建物も建っていない状況ですが、水面下で着々と準備を進めています。
この記事では、
- お店作りの設計図となる「事業計画」
- 日々のパン作りを支える「厨房の動線設計」
- お店の魂ともいえる「コンセプト作り」
という、お店作りの大きな3つの柱について、私が今まさに行っていること、考えていることを具体的にお伝えしていきます。
これからご自身でお店を始めてみたいと考えている方や、普段利用しているお店がどんな風に作られているのか、その裏側に興味がある方にも、楽しんで読んでいただける内容になっているかと思います。
はじめに:来年の移転に向けて、今、進めていること
「移転準備、進んでいますか?」
最近、お客様からよくこんな風にお声をかけていただきます。本当に気にかけていただいて、嬉しい限りです。ありがとうございます!
正直にお答えすると、新しいお店の建物はまだ影も形もありません(笑)。ですが、見えないところでは、やれることを着々と進めている、というのが今の状況です。
お店作りというのは、本当に決めることの連続です。でも、その一つ一つが未来のお店に繋がっていると思うと、大変さよりもワクワクする気持ちの方が大きい毎日を送っています。
今回は、そんな移転準備のリアルな裏側、特にお店を始めるための「計画」の部分を少し深掘りしてお話ししてみたいと思います。
お店作りの第一歩!「事業計画」って何をするの?
新しいお店を始めるにあたって、私がまず最初に取り組んだのが「事業計画を立てる」ことです。
「事業計画」と聞くと、なんだか難しくて専門的なイメージがあるかもしれませんね。
簡単に言うと、「このお店で、どれくらいのパンを作って、どれくらいのお客様に来ていただいて、どれくらいの売上を目指すのか。そのために、材料費や人件費、家賃などの経費はどれくらいに収めれば、お店を続けていくことができるのか」という、お店の未来を描く設計図のようなものです。
この設計図がぼんやりしていると、いざという時に「何を決め手にしたら良いかわからない…」と、大切な決断ができなくなってしまいます。
例えば、パンを焼くためのオーブン一つを選ぶにしても、「どれくらいの数のパンを焼きたいのか」という目標が定まっていなければ、大きさも性能も決められませんよね。
事業計画は、そうした漠然としたイメージを具体的な「数字」に落とし込み、現実的な目標を設定していくための、とても大切な作業なんです。
過去の経験が道しるべに
これから初めてお店を開く方は、本当に何もないゼロの状態から、いわば「勘」を頼りに計画を立てていくことになるので、とても大変だと思います。
その点、私は少しラッキーでした。
市川市の曽谷という場所で6年間お店を続けてきた経験と実績があったからです。
この6年間で、「これくらいの時間で、これくらいのパンを生産できて、これくらいのお客様が来てくださって、これくらいの売上になる」という、具体的なデータが私の手元にはありました。
この数字が、新しいお店の計画を立てる上での強力な「物差し」になってくれたんです。
もちろん、移転先の東松戸は今の市川のお店とはお客様の層も変わるでしょうし、お店の規模も3倍近くと大きくなります。
「お店が3倍になるから、売上も単純に3倍!」なんて甘い計算はできません。
でも、「まずは2倍を目指してみよう」「いや、堅実に1.5倍から考えよう」というように、過去の実績を元に、現実的な目標を設定することができます。
この物差しがあるおかげで、闇雲に夢を語るのではなく、地に足の着いた計画を立てることができるのです。
数字と向き合う大切さ
事業計画を立てるということは、華やかな夢と同時に、シビアな現実と向き合うことでもあります。
売上目標が決まれば、そこからパンの材料費である「原価」、スタッフさんのお給料である「人件費」、お店の「家賃」や「水道光熱費」など、出ていくお金(経費)を差し引いて、手元にいくら利益が残るのかを計算します。
もし、この計算結果がマイナスになってしまったら…。
それはつまり、営業すればするほど赤字が増えていき、いずれはお店を閉めなくてはならない、ということを意味します。
そうならないために、「どうすればプラスにできるか?」「そのために、何をすべきか?」を考えるのが、事業計画の最も重要な役割です。
これは、お店を経営したことがないと、なかなか実感しにくい部分かもしれませんね。
「どうしよう」から「やってみよう」へ!行動し続けることのパワー
正直に言うと、この5年間、常に順風満帆だったわけではありません。
「このままじゃ厳しいかも…」と、頭を抱えた時期も一度や二度ではありませんでした。
でも、そんな時でもただ「どうしよう…」と悩んでいるだけでは、何も状況は変わらなかったと思います。
「とにかく、何かやってみよう!」
その一心で、新しいパンのメニューを考えてみたり、地域のイベントに出店してみたり、お店のレイアウトを変えてみたり…。
とにかく具体的なアクションを起こし続けてきたからこそ、今があるんだと、強く感じています。
もちろん、挑戦したことすべてが成功したわけではありません。
10個新しいことを試してみて、そのうちの1個でも当たればラッキー!くらいの感覚です。
大切なのは、失敗を恐れずに「お店を絶対に守るんだ」という強い気持ちを持って、行動し続けること。
資金や体力があるうちに、打てる手は全部打ってみる。その積み重ねが、お店を強くしてくれるんだと信じています。
今回の移転は、これまでの経験という財産を持った上で、さらに新しい挑戦ができる大きなチャンスです。
以前よりもずっと多くのことを想定し、考えられるようになりました。この経験を活かして、さらに皆さんに喜んでいただけるお店を作っていきたいと思っています。
働く私がワクワクする厨房へ!効率と快適さを追求した動線計画
事業計画と並行して進めているのが、新しい厨房の設計です。
今のお店は、限られたスペースの中で工夫を重ねて厨房を作りました。それはそれで愛着があるのですが、次はなんと、ゼロから自由に設計できるんです!
これが、もう、本当に楽しくて!
水道の位置、オーブンの配置、パン生地をこねる作業台の場所…。そのすべてを、自分たちの働きやすさに合わせて決められます。
無駄な動きをなくすためのシミュレーション
私が厨房設計で一番こだわっているのは、スタッフの「動線」です。
動線とは、厨房の中で人が作業をしながら移動する経路のこと。
この動線が悪いと、「あ、ごめん、通るね!」とスタッフ同士がぶつかったり、「ここの扉を開けると、後ろの冷蔵庫にぶつかって開けにくい…」といった、日々の小さなストレスが生まれてしまいます。
そうした無駄な動きやストレスをなくし、みんなが効率よく、気持ちよく作業できる空間にするにはどうしたら良いか。
頭の中で何度も何度も、スタッフがパンを作る流れをシミュレーションしています。
快適で効率的な厨房は、パンの品質を安定させることにも繋がりますし、何より、働く私たちのモチベーションを大きく上げてくれるはずです。
経費節減!CADで描く未来の厨房
理想の厨房を形にするために、最近、私が挑戦したことがあります。
それは、「CAD(キャド)」を使って、自分で厨房の図面を描くことです。
CADというのは、「Computer-Aided Design(コンピュータ支援設計)」の略で、パソコン上で専門的な図面を引くことができるソフトのことです。
もちろん、設計士さんやデザイナーさんにお願いすれば、立派な図面を描いてもらえます。でも、そこにかかる費用も決して安くはありません。
「その費用を少しでも節約して、新しいオーブンやお客様のための設備に充てたい…!」
そんな想いから、「よし、それなら自分でやってみよう!」と決意しました。
慣れない作業で時間はかかりましたが、自分の手でミキサーやオーブンを配置し、理想の動線を描き、立体的な厨房のイメージが完成した時の達成感は、本当に大きなものでした。
この手作りの図面を元に、今、業者さんと具体的な打ち合わせを進めています。
パンの味だけじゃない!お客様の心を掴む「コンセプト」の魔法
事業計画が決まり、厨房の設計もほぼ固まりました。
そして、次に来るのがお店の「コンセプト」を確立する、というとても重要なステップです。
コンセプトとは、簡単に言えば「このお店は、どんなお店なのか」を一言で表す、お店の魂のようなもの。
そして、このコンセプトは、ただ私たちが「うちはこういうお店です」と掲げるだけの、自己満足であってはならないと思っています。
大切なのは、そのコンセプトがお客様に伝わり、「なんだかワクワクする!」「このお店を応援したい!」と思っていただけること。
コンセプトを形にする具体例
では、どうすればコンセプトがお客様に伝わるのでしょうか。
それは、お店のあらゆる要素に、そのコンセプトを反映させ、統一感を持たせることだと考えています。
例えば、
- お店の内装デザイン
- スタッフが着るユニフォーム
- パンの陳列方法
- 新商品のアイデア
- スタッフの接客スタイル
これらすべてに、一貫したコンセプトが流れていること。
具体例を挙げるなら、もし「国産小麦の素朴な美味しさを伝えたい」というコンセプトを掲げるなら、お店の内装は木の温もりを感じるナチュラルな雰囲気や、少し「和」のテイストを取り入れた和モダンな空間にするかもしれません。
ユニフォームも、スタイリッシュなシャツではなく、昔ながらの割烹着や、手ぬぐいのような素材を使ったエプロンにしてみると、よりコンセプトが伝わりやすくなりますよね。
このように、お店の隅々までコンセプトを行き渡らせることで、お客様は無意識のうちに「あ、ここはこういうこだわりを持った、面白いお店なんだな」と感じてくださるはずです。
五感で楽しむお店の雰囲気
今のお店を始めた当初は、私自身もまだ経験が浅く、コンセプトもどこか漠然としていました。
5年間お店を続ける中で、少しずつその輪郭がはっきりしてきて、今では強固なものになったと感じています。
次の新しいお店では、この固まったコンセプトを、味やサービスはもちろんのこと、「ビジュアル」にもっと反映させていきたいんです。
というのも、人は食べ物を味わう時、舌だけでなく「目」でも味わっていると、私は思うからです。
例えば、同じ焼きそばでも、使い捨ての紙皿で食べるのと、有田焼のような美しいお皿に盛り付けられて出てくるのとでは、どうでしょうか。
きっと、後者の方が何倍も美味しく感じますよね。
それと同じで、お店の空間デザインや照明、商品の見せ方といったビジュアルは、お客様の満足度に大きく影響します。
多くのお客様で賑わう繁盛店は、こうした色や形が人に与える心理的な影響を、とても上手に活用されているなと感じます。
新しい「ひとぱん工房」では、パンの美味しさはもちろんのこと、お店に一歩足を踏み入れた瞬間からワクワクするような、五感で楽しんでいただける空間作りを目指しています。
まとめ:ワクワクする未来を皆さんと一緒に
今回は、来年の移転オープンに向けた準備の裏側を、少し詳しくお話しさせていただきました。
決めることも考えることも山積みで、頭から湯気が出そうな日もありますが(笑)、ゼロから理想のお店を創り上げていくプロセスは、本当に楽しく、やりがいに満ちています。
これから、お店のコンセプトや内装のデザイン、新しいユニフォームなども少しずつ具体的になっていきます。その様子も、またこのブログやSNSで皆さんにご報告させてくださいね。
いつも温かく見守ってくださる皆様に、心から感謝しています。
新しい東松戸のお店で、最高のパンと最高の空間を用意して皆様をお迎えできる日を、私自身が誰よりも楽しみにしています。
これからも、「ひとぱん工房」をどうぞよろしくお願いいたします!