北海道本別町の国産小麦農家さんに乾燥機や農業機械、穂発芽や等級決めについて伺いました。

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土蔵農場との11年の歩みとアグリシステムの未来

今日は、私たちの大切なパートナーである土蔵農場さんについてお話ししたいと思います。
昨日も少し触れましたが、土蔵農場さんは私たちアグリシステムにとって本当に重要な生産者さんです。

今年で11年目を迎えるヌーボーツアーですが、その間、唯一の例外であるコロナの年を除いて、毎年土蔵さんが関わってくださり、応援し続けてくれました。
彼らは、私たちが提唱する「ワンテーブル」の理念、すなわち育てる人、作る人、食べる人が対話を通じてつながり、尊重し合うことで新しい流通の形を築こうという考え方に深く賛同してくださっています。

今回のツアーでは、特に注目すべき製品が「本別町の石臼挽地粉」です。
これは土蔵信さん、小島裕之さん、佐藤亘さんの三人が「きたほなみ」という品種だけを使って作った特別な製品です。
この製品が生まれた背景には、ただ作るだけでなく、パン屋さんたちとの対話を通じた長年の試行錯誤と工夫がありました。

例えば、全粒粉の品質を向上させるために、窒素の過剰蓄積を防ぐ取り組みとして化学肥料の使用を減らしたり、一時期は多くの品種を育てる苦労を乗り越え、現在は2品種に絞ってバランスを取りながら栽培を続けるなど、様々な変化を共に経験してきました。

さらに、土蔵さんたちは「リジェネラティブベーカリー」の取り組みを支えるために農薬や化学肥料の使用を減らすだけでなく、次世代のために土壌を豊かにすることを目指しています。
彼らは、結果として農薬や化学肥料に頼らない農業を実現し、日本が掲げる「緑の食料システム戦略」にも自然と合致する形で農業を行っています。

具体的には、農薬使用の44%減、化学肥料使用の4割以上減、2019年以降はネオニコチロイド系農薬の不使用、後作緑肥の導入など、さまざまな取り組みを行っています。
さらに、佐藤亘さんは酪農も手がけており、堆肥を畑に循環させることで化学肥料の使用を抑えています。

このような素晴らしい取り組みと人柄に、多くの人が惹かれているのだと思います。
今回のツアーで、ぜひ土蔵さんたちとの時間をゆっくり過ごし、彼らの情熱と努力に触れていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

土蔵農場の広大な畑とその魅力

土蔵信さん

今日は私たちの農場とその取り組みについてお話ししたいと思います。
私たちの農場は約93ヘクタールの広さがあります。
これは、東京ドーム22~23個分に相当する広さです。
この広大な面積で、小麦を約54ヘクタール栽培しており、残りは大豆、小豆、ビートなどを育てています。ビートは砂糖の原料としても使われています。

小島裕之さん

私たちの家は池田町との境にあり、都会の便利さも感じられる場所です。農場では約96ヘクタールの土地を活用し、小麦と豆類を中心に栽培しています。
具体的には、ゆめちから、きたほなみ、春よ恋の3種類の小麦を育てており、64ヘクタールほどを占めています。
豆類では、小豆、大豆、そして大正金時という煮豆に使われる赤い金時豆も作っています。
小豆は井村屋さんに提供しており、井村屋のあんまん、あずきバーにも使われています。

佐藤亘さん

私たちの農場では酪農も行っており、牛を飼いながら牛乳を絞っています。今日ご紹介するチーズは、私の妻である利恵が手作りしたものです。
後ほど、モッツァレラチーズの手作り体験も予定していますので、ぜひ参加してみてください。

はるこまベーカリー 栗原シェフ

今日は特別なゲストとして、帯広の「はるこまベーカリー」から栗原シェフが来てくださっています。
栗原シェフは「本別町の石臼挽地粉」を使ってバゲットやピタパンを焼いてくださっています。
はるこまベーカリーは帯広市の西19条南5丁目にあり、10年以上も私たちと共に歩んできた仲間です。
今日のパンは、完全に「本別地粉」を使用しており、2つの異なる製法で作られていますので、食べ比べを楽しんでください。

広大な畑と最新の機械で支える私たちの農業

私たちの農場では、約93ヘクタールの畑を管理しています。その広さは、東京ドームでいうと22~23個分に相当します。
畑作業では、特に小麦の栽培が中心で、全体の約半分の54ヘクタールほどを小麦が占めています。
他には、大豆や小豆、ビート(砂糖の原料)なども育てています。

作業の第一段階では、畑を均等に整えるためにデスクという機械を使っています。
この機械は、畑を細かくして小麦が蒔ける状態にする役割を果たします。
1日に約20ヘクタールを処理できるため、私たちの小麦の畑全体の半分ほどは1日で準備できます。

次に、小麦の播種(はしゅ)作業に移ります。
トラクターに取り付けられた播種機を使って、小麦の種を畑に撒きます。
この作業も1日に約20ヘクタールを処理することができます。
ちなみに、これらの機械はすべて海外製で、畑を細かく砕土しながら種を撒く仕組みになっています。

私たちの農場では、以前は4種類の小麦(はるきらり、キタノカオリ、ゆめちから、きたほなみ)を育てていましたが、現在は種を蒔き直す手間を減らすために品種を絞っています。

収穫は7月下旬頃に始まります。
収穫には大きな緑色のコンバインを使いますが、私たちの乾燥機の能力からして、1日に収穫できるのは7~8ヘクタールほどです。
このため、収穫には計画的な取り組みが必要です。
コンバインもドイツ製で、北海道の広大な面積に対応するために大きな機械が必要となります。

日本の気候は湿度が高いため、短期間での収穫と乾燥が重要です。
特に7月下旬から約10日間が勝負の時期となります。
この間に迅速に収穫しないと、芽が出てしまい、1年間の努力が無駄になってしまいます。

こうした事情から、私たちは高価な海外製の機械を導入しています。
確かに費用はかかりますが、それだけの価値があると信じて、日々の作業に取り組んでいます。

小麦の乾燥と収穫のプロセスについて

私たちの農場での小麦の乾燥と収穫のプロセスについて詳しくお話しします。

小麦の収穫が始まると、まず昇降機で小麦を運び、粗選機でゴミを取り除きます。
その後、小麦は乾燥機に入れられます。
私たちの乾燥機は60石(約6トン)の容量があります。
収穫時の小麦の水分量は約30%前後ですが、まずは半乾燥状態の16%まで乾かします。

乾燥のプロセスは、畑全体の小麦を収穫し終えてからもう一度行います。
最終的には小麦の水分量を12.5%まで下げる必要があります。
この12.5%という数値は、穀物検査の基準であり、これを超えると受け入れてもらえません。
そのため、私たちは乾燥機で11.8%~12%程度まで乾燥させてから出荷しています。

乾燥機は遠赤外線と灯油を使って小麦を乾かします。
昇降機で小麦を順に回しながら乾燥させ、温風も使用します。
また、外に高風ファンがあり、ゴミを外に排出します。

収穫作業は、昼頃に小麦を刈り取り、乾燥機に入れて次の日の朝には水分量が17%になるように進めます。
最適な刈り取り時期は小麦の水分量が27~28%のときで、この状態が一番品質が良いとされています。
圃場の乾燥状態を確認しながら収穫を進めますが、圃場全体が均等に乾燥しているわけではないため、経験と勘が重要です。

私たちは水分計を使用して小麦の水分を計測します。
小麦を水分計に入れるだけで、約5秒で正確な水分量が測れます。
この機械は乾燥機を持つ個人農家にも広く利用されており、私たちも豆の水分を測るのに使用しています。

日本における小麦の品質と検査基準について

現在の日本では、小麦の見た目も非常に重視されています。
私たち農家もその基準に合わせて栽培を行っています。
小麦の品質を評価する際には、容積重や水分量だけでなく、灰分、フォーリングナンバー、たんぱくなどの基準が求められます。
これらの基準を3つ以上満たさないと、一等級(Aランク)にはならないのです。

製粉会社も、これらの基準を満たした高品質な小麦を求めています。
例えば、北海道で栽培される「キタノカオリ」は、管理が難しい品種です。
穂発芽に弱く、管理が大変ですが、美味しい小麦として知られています。
しかし、収穫時期に雨が多いと、穂から芽が出てしまい、でんぷん質が糖化してしまう問題があります。
こうなると、アミロース含有量が低下し、「低アミロ小麦」として評価が下がります。
このため、パンの焼き色や甘みを引き出すために工夫して使うパン屋さんもいますが、一般的には等級が下がり、農家の収入に影響が出ます。

小麦の品種改良についても、うま味の研究が進められていますが、小麦そのもののうま味なのか、小麦粉としてのうま味なのか、焼成によるうま味なのか、評価が難しいため、実現にはまだ時間がかかると思います。

毎年、収穫される小麦の状態は異なります。
そのため、選別も毎年同じ基準ではなく、その年の状況に合わせて行われます。
例えば、粒の小さい年には、網のサイズを小さくして一等級を目指す工夫をしています。

小麦農家の皆さんへの感謝

日本の小麦農家の皆さんは、見た目や品質に厳しい基準をクリアするために、日々多大な努力をされています。
例えば、収穫時の水分管理や容積重、灰分、フォーリングナンバー、たんぱく質といった基準を満たすために、畑の管理から収穫、乾燥まで一貫して細心の注意を払っています。
それでも、美味しい小麦を皆さんに届けたいという強い思いで、農家の皆さんは工夫を凝らしながら栽培を続けています。

毎年異なる気候や環境に対応しながら、安定した品質の小麦を提供するために、選別基準を調整し、一等級の小麦を目指すその努力には、頭が下がります。

私たちが日常的に楽しむパンや製品の背景には、こうした小麦農家の皆さんの献身があります。
今回お話を伺った農家の皆さん、本当にありがとうございます。
美味しい小麦を楽しむことができるのは、小麦農家の皆さんのおかげだと思いました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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ひとぱん工房
ひとぱん工房
国産小麦100%のパン屋
国産小麦100%にこだわり、熊本と北海道から厳選した小麦を使用する「ひとぱん工房」は、毎週土曜と日曜日のみオープンする手作りパンのお店です。東京や大阪の有名店で10年以上修行を積んだ女性店長が、香り高い素材を引き立てるこだわりの製法で丁寧に焼き上げています。砂糖はミネラル豊富な鹿児島県産の粗糖、塩には沖縄県産のシママースを使用し、素材の旨みを最大限に引き出したパンをお届けします。小麦の豊かな風味とふんわりとした食感が特徴で、どれも素材本来の味わいを存分に感じられると思います。
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