国産小麦×ライ麦×米粉で広がるパンの世界!サワーダネで楽しむ奥深い味わい
要約
こんにちは。ひとぱん工房の店長、ひとみと申します。私が大切にしているのは、国産小麦をはじめとするこだわりの素材を使い、パンの新たな可能性を追求することです。今回は、最近注目している米粉パンや、自家培養で育てているライ麦のサワーダネについてじっくりお話しします。米粉パンのふわっとした食感や、酸味を感じるライ麦パンの奥深い味わいなど、試作の裏側やコツを織り交ぜながら、その魅力をお伝えできればと思います。
米粉パンへの挑戦
私が米粉パンに興味を持ったきっかけは、小麦粉と違った素材感をパンに活かせないかと考えたことでした。小麦に含まれるグルテンがない米粉では、小麦パンのようなふんわり感や気泡の構造をつくり出すのが難しいとされています。しかし、その分だけ米粉特有のモチモチ感や甘みを生かしたパンができるのではないかと思い、試作を重ねてきました。
クロワッサンの話題から見えた米粉の可能性
あるとき、米粉を使用した「伸びるクロワッサン」を取り扱っているパン屋さんを訪れたんです。噛んだ瞬間は「表面がお餅みたい」という印象を受けたので、「これは米粉をうまく活かしているんだな」と感じました。ただし、100%米粉ではないらしく、小麦のグルテンも残っているとのことでした。やはり純粋に米粉だけで作るのは気泡の保持が大変で、小麦の助けを借りたほうが安定する面があるようです。
私自身、米粉食パンを試作するときは、液体生地の硬さにとても気を配っています。硬すぎると口当たりが重たくなりますし、緩すぎるとふくらみが弱くなってしまうんです。その微妙な配合を見極めることが大事で、まさにギリギリのラインを攻めています。そのうえで、泡立て機を活用してしっかり空気を含ませるなど、小麦とは異なるアプローチでパンを膨らませる工夫をしているところです。
米粉パン作りの工夫
ここでは、私が日頃の米粉パンづくりで心がけているポイントをもう少し詳しくお話しします。
- 生地の粘度の管理
米粉と水分の配合次第で、生地が硬くなったり、逆にしゃばしゃばになってしまいます。ほんの少しの調整だけでも焼き上がりが大きく変化するため、ここは試行錯誤の繰り返しです。 - 油脂の活用
グルテンがない分、米粉だけでは気泡を保持しにくい傾向があります。そこで、米油などの油脂を加えると、生地表面に薄い膜ができてガスを保ちやすくなるんです。食感の変化や風味も考慮しながら、慎重に配合を決めています。 - 短時間で一気に焼き上げる
米粉パンは、気泡が潰れる前に一気に加熱する必要があります。私の場合、しっかりと前段階で気泡を作って、生地がいちばんふくらんでいるタイミングを逃さずにオーブンへ。ここで数分の遅れが大きな差になるので、焼成のタイミングはとても重要です。
これらの工夫を重ねることで、モチっとふわふわの米粉パンらしさが出てきます。ただ、まだまだ研究の余地があり、私自身も「もっとおいしい米粉パン」が作れないかと常に模索しています。
ライ麦のサワーダネに魅了されて
続いては、私が最近とくに興味を持っているライ麦のサワーダネのお話です。きっかけは、ある勉強会でライ麦粉が土壌改良や農業面で注目されていると知ったことでした。ライ麦は日本ではまだそこまでメジャーではありませんが、実は成長力があり、さまざまな環境下でも育ちやすい穀物として期待されています。その活用の一つとして、パン屋としてはやはりライ麦パンのおいしさを広めたいと思ったのです。
サワーダネとは?
サワーダネはフランス語で「ルヴァン」、英語で「サワー」と呼ばれる自家培養の天然酵母の一種です。一般的にはイースト菌を使ってパンを膨らませますが、サワーダネの場合は粉そのものについている微生物を育てて発酵させます。つまり、何か特別な菌を外部から加えるのではなく、ライ麦粉や小麦粉の中に潜む菌たちを引き出しているんです。
サワーダネは独特の酸味を持つのが大きな特徴です。放置するとどんどん酸味が強くなりますが、焼く前にリフレッシュという手順で新たに粉や水を与えると、酸味を和らげつつ元気に育てることができます。私は初めて起こしたサワーダネが3日目くらいで勢いよく発泡し、容器の蓋まで飛び出すほどに活発になった姿を見て、本当に「生き物を育てているんだなあ」と感動しました。
ライ麦パンの奥深い味わい
ライ麦パンは、ふわっとした小麦パンとはまるで違う世界が広がっています。特にライ麦100%のパンは色が黒く、しっとりと重めの食感で、最初は抵抗を感じる方も多いかもしれません。でも、このパンが持つ酸味や噛みしめたときのじわっとしたうま味がくせになるんです。面白いのは、焼きたてよりも数日寝かせたほうが味わいが増すという点。まるで発酵食品が熟成するのと同じように、日に日に風味が深まっていくのを感じます。
日本人の食卓とライ麦パン
ライ麦パンはヨーロッパでは古くから親しまれており、特にドイツや北欧では主食のように日常的に食べられています。一方、日本ではまだまだライ麦パンを食べる習慣が根付いていません。濃い茶色や酸味のある風味に、つい敬遠してしまう方も多いでしょう。しかし、私はこう思うんです。
「小麦パンとも違う、ライ麦の味わい深さをぜひ体験してほしい」
例えば朝食にライ麦パンを薄めにスライスして、バターやクリームチーズ、あるいはハチミツなどをのせると、酸味とのコントラストが絶妙です。ハムやベーコン、スモークサーモンのような塩味の強い食材とも相性抜群ですよ。
サワーダネパン作りのリアルな流れ
私がこれから挑戦したいのは、ライ麦100%のサワーダネパンです。まだ試作段階なので、うまくできるか正直ドキドキしています。実際のところ、サワーダネだけでパンを膨らませるためには時間をかけて発酵を見極める必要があるんです。通常のイーストなら1時間ほどで膨らむ生地が、サワーダネだと5~6時間かかることもザラ。だからこそ、菌の元気な状態をキープしながら、パン生地が「もう焼いていいよ」と声をかけてくれるタイミングをじっと待たなくてはいけません。
発酵の見極め
- 触感と膨らみ具合
そっと生地を指で押したとき、弾力を残しながらもしっかり空気を含んでいる感じがわかると、「そろそろオーブンへ入れようかな」という合図になります。 - 香り
サワーダネ特有の酸味がありつつ、少し甘いような、フルーティーな香りが立ち上ってくると準備完了。ここが一番難しいところです。 - 管理温度
温度が低すぎると発酵が進まず、逆に高すぎると菌が暴れすぎて生地がつぶれてしまいます。季節や気温を考慮して微調整するので、まさに自然と対話しているような感覚です。
これからの展望
私はこれから、サワーダネを使ったライ麦パンを何とか完成させて、ひとぱん工房の店頭に並べたいと考えています。そして、米粉パンもさらに改良を重ねることで、よりふっくらとした仕上がりにできればと思っています。パン作りは無限に広がる世界で、素材や酵母を変えるだけでまったく違う食感や風味が生まれるところがとても面白いんです。
ライ麦と米粉をもっと身近に
- ライ麦の魅力
土壌改良にも寄与するライ麦は、今後ますます注目される可能性を秘めた作物です。パンだけでなく、クッキーやビスケットなどにも活用できるので、家庭でも取り入れてみると面白いですよ。 - 米粉の新しい形
和の食材として馴染み深いお米を使った米粉パンは、アレルギー対応や健康面での利点も期待されています。小麦パンとは違うモチモチ食感が楽しめるので、「パンは大好きだけど新しい味も試したい」という方におすすめです。
おわりに
長くなりましたが、私が日々取り組んでいる米粉パンやライ麦のサワーダネについて、その魅力や試行錯誤をご紹介しました。パン作りは簡単ではありませんが、だからこそ、うまく焼けたときの喜びや達成感はひとしおです。米粉パンは配合の微調整が、ライ麦パンは発酵の見極めが大事で、どちらも「生き物と向き合う」ような楽しさがあります。
もし、ひとぱん工房にお越しいただけるなら、ぜひ試作や新作のパンを手に取ってみてください。私自身もまだまだ勉強中の身ですが、これからも素材や酵母にこだわり、一つひとつのパンに心を込めて焼き続けていきます。皆さんのパンライフが、もっと豊かで楽しいものになりますように。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。