北海道浦幌町の国産小麦農家さんに、有機栽培ライ麦について伺いました
浦幌町での有機農業の取り組み
次に訪れるのは浦幌町です。
ここは現在、有機転換を進める生産者が増えている地域で、伊場さんもその一人です。
彼はリジェネラティブ農業に積極的に取り組んでおり、現在はオーガニックのライ麦を栽培しています。
オーガニック農産物とは、農薬や化学肥料を3年以上使用せずに育てた農産物で、かつ有機ジャス認証を受けたものを指します。
伊場さんのライ麦もこの認証を取得しています。
しかし、有機農産物を栽培する過程には「転換期間」という特別な期間があります。
転換期間中の有機農産物
「転換期間中」とは、農薬や化学肥料を使用せずに1年目と2年目に育てた農産物のことです。
この期間中の農産物も有機ジャス認証を受けており、有機農産物として扱われますが、販売時には「転換期間中」という表示が義務付けられています。
この表示義務は、メーカーや販売者にとっては手間が増えるため、現実的には「転換期間中」の農産物を使わない選択をすることが多いです。
しかし、世界的なオーガニックへの関心の高まりや化学肥料・農薬の高騰により、オーガニック農産物への転換が進んでいます。
日本におけるオーガニック農業の現状と挑戦
日本のオーガニック農地面積はわずか0.5%ですが、アグリシステムと契約する有機農家は増加しています。
この3年間で26件の生産者が有機転換に取り組んでいます。これまで30年間で25件だったことを考えると、非常に大きな変化です。
このような変化の中で、アグリシステムは農家へのサポートを強化し、転換期間中の農産物の販路拡大にも取り組んでいます。
現在、11社の大豆加工メーカーが転換期間中の大豆を使用することに賛同しており、オーガニック普及の一助となることを目指しています。
ライ麦と土壌改良
ライ麦は土壌に非常に良い影響を与える作物です。
ライ麦は地上に高く伸びると同時に、地下にも深く根を張ります。
この深い根が土壌の団粒構造を形成し、土を健康に保ちます。
長年の除草剤や化学肥料の使用で損なわれた土壌を改良するためにも、ライ麦は有効です。
リジェネラティブ農業の一環として、ライ麦を栽培することは、土壌改良の重要な柱となっています。
これから訪れる伊場さんの畑では、このライ麦の成長とその影響をぜひご覧ください。
伊場ファームの紹介
こんにちは。浦幌町で畑作を行っている伊場ファームの伊場満広と申します。
今日は皆さんにお越しいただきありがとうございます。
僕は46歳ですが、22歳の頃から農業を始め、現在25年ほど続けています。
現在は35ヘクタールの農地を経営しており、そのうちの4ヘクタールで有機ジャス認証を取得した農作物を栽培・販売しています。
有機ジャス認証は畑単位で取得するため、この4ヘクタールの畑が認証を受けているということです。
浦幌町は畑作と畜産が盛んな地域で、来る途中にも牛舎を見かけたかもしれません。
本当に一次産業が集まった場所で、こうした土地で皆さんに私たちの活動を見ていただけるのは本当に嬉しいです。
栽培している作物の紹介
私たちが育てているのは「白花豆」というツル製の豆で、竹を使ってツルを支えています。
この作業は全て手作業で行っており、種まきも手作業です。
豆が成長すると、8月頃には竹に絡まり、長方形の形になるほど茂ります。
風通しを良くするために、ツルをまっすぐに整え、病気が発生しないように工夫しながら、農薬を使わないで育てています。
トヨシロというジャガイモは、ポテトチップスなどでよく知られる品種です。
その奥には金時豆があり、「はるきらり」という春まき小麦もアグリシステムに出荷予定です。
白花豆は北見地方で栽培が始まりましたが、今では作り手が減少し、手間がかかるため若い人には敬遠されがちです。
しかし、売れるチャンスがある作物なので、浦幌町でも20ヘクタールほど作っています。
有機栽培ライ麦畑
ここがライ麦畑です。
ライ麦は秋に種をまき、冬を越えて成長します。
化学肥料や農薬は使用せず、有機栽培で育てています。
ライ麦は背が高く、雑草を抑える効果があり、有機栽培に非常に適した作物です。
また、クローバーをまくことで、土壌に窒素を固定し、肥料の代わりにしています。
有機栽培の利点
有機栽培を始めた理由は、化学肥料や農薬に頼らず、自然の力だけで農作物を育てることに価値を見出したからです。
外国からの輸入が止まった場合でも、自給自足できる栽培方法を確立したいと考えました。
私たちの有機圃場は4ヘクタールあり、ライ麦、スイートコーン、大豆の3種類の作物を育てています。
ライ麦を収穫した後は、緑肥を砕いて土と混ぜ、次の年に大豆をまきます。このサイクルを繰り返すことで、土壌の環境を改善しながら農業を続けています。
有機栽培の課題と工夫
ライ麦は8月上旬に収穫予定です。
収穫後は、茎を砕いて土と混ぜることで、次の作物の栄養源にしています。
有機栽培は、農薬や化学肥料を使わないだけでなく、農家にもメリットの多い栽培方法だと感じています。
有機栽培で一番の課題は雑草です。
隣のスイートコーン畑でも、1週間前に5人ほどで除草作業を行いました。
しかし、経験を積むことで除草作業の手間も少なくなり、ライ麦を栽培することでさらに除草の手間が省けます。
慣行農業では農薬や肥料を使用する手間がありますが、有機栽培ではその手間がないため、逆に作業が楽になってきました。
有機栽培に切り替えることで、作物の品質が向上することが期待できます。
慣行農業で使用される化学肥料や農薬に依存せず、作物本来のポテンシャルで育つため、品質が一定のレベルで安定します。
労働力と出荷先の課題
現在、ライ麦と大豆はアグリシステムさんに出荷していますが、スイートコーンに関しては全て自社で手取り収穫し、発送も行っています。
労働力の確保が難しく、スイートコーンの一部は収穫できずに廃棄しています。
出荷先を見つけることも課題で、浦幌町のふるさと納税や楽天市場で販売していますが、追いつかない状況です。
有機栽培の可能性と未来
有機栽培に切り替えてから、デメリットを感じることはほとんどなくなりました。
最初は周囲の目も気になりましたが、他の有機農家さんとの交流を通じて解消されました。
今では、有機栽培の可能性を広げることに興味を持ち、トマトやカボチャ、スイカなど様々な作物を有機栽培で育てることができる可能性に楽しさを感じています。
スイートコーンを緑肥として栽培し始めたところ、意外と良い収穫が得られました。
北海道の施肥基準に従わなくても、作物自身が十分に育つことを発見しました。
微生物を大切にする農法
有機栽培では、土壌の微生物を大切にし、トラクターの使用を最小限に抑えるよう心がけています。
土壌を深く掘り返すと、微生物の住環境が壊れてしまうため、なるべく自然の状態を保つようにしています。
ライ麦の根は非常に深く張り、土壌環境を改善する助けになります。
人間が無理に耕すのではなく、作物に土を耕してもらうという考え方で有機栽培を行っています。
例えば、スイートコーンについて、一般的にはアブラムシが付くイメージがありますが、有機栽培ではその心配が少ないことが驚きでした。
これは、余計な窒素分がないため、虫が寄りにくくなるからだと思います。
通常の農業では、窒素肥料が虫を引き寄せ、結果として殺虫剤が必要になりますが、有機栽培ではそういった悪循環を避けることができます。
もちろん多少の虫は付きますが、スイートコーンの内部にはほとんど影響がありません。
有機栽培の市場と販売の課題
有機栽培の作物を販売するには、まだ課題があります。
消費者は有機栽培を好む傾向がありますが、中間業者が有機栽培に慣れていないため、販売の難しさが残ります。
生産者は農協に作物を出荷することが多く、直接販売する経験が少ないため、販売方法がわからないのです。
ここで重要な役割を果たしているのがアグリシステムさんです。
彼らが中間に入ることで、有機栽培の裾野が広がり、十勝でも有機栽培の生産者が増えてきました。
この貢献は非常に大きいと思います。
まとめ
有機栽培は、環境に優しく、持続可能な農業の方法として大きな可能性を秘めています。
肥料や農薬を使わないことで、自然界の悪循環を避け、作物本来の力で育つことができます。
浦幌町の伊場ファームでは、ライ麦やスイートコーン、大豆などを有機栽培で育て、地域の農業に新しい風を吹き込んでいます。
最後に、今回の説明をしてくださった伊場さんに深く感謝申し上げます。
伊場さんの情熱と努力により、有機農業の未来がさらに明るくなることを願っています。
今日は本当にありがとうございました。