国産小麦×天然酵母の新発見!体に優しいパンをめぐるドライブレポート
要約
今回は、ドライブをしながら訪れた2軒のパン屋さんについてご紹介します。1軒目は国産小麦と天然酵母にこだわる「グランクール」。ここで味わったフレンチトーストは、小さくカットされたハード系パンに液がしっかり染み込み、甘さと噛み締めの良さを同時に楽しめる一品でした。2軒目はベーグル専門店「リビングコーヒー&ベーグルズ」。ふんわり見えるのにずっしり詰まったベーグルが印象的で、直焙煎コーヒーとのセットが人気。両店とも、体に優しい素材と独自の食感・味わいを生かしたパン作りをされており、ひとぱん工房でのパン作りとも通じるものを感じました。
はじめに
私は普段、ひとぱん工房でパンを作りながら、さまざまなパン屋さんの研究や試食を行っています。今回は、ドライブがてら気になる2軒を訪問してみることにしました。普段の生活圏から少し足を伸ばし、実際にその味や雰囲気を感じることで、また新たなパン作りのアイデアにつながるかもしれない。そんな期待を抱きつつ、行ってみたのです。
訪れた2軒の概要
- グランクール:国産小麦と天然酵母を使用し、フレンチトーストやハード系のパンが人気。

- リビングコーヒー&ベーグルズ:ベーグルと直焙煎コーヒー専門のおしゃれなお店。

それでは、順番に詳しくご紹介します。
グランクールの魅力

1. 国産小麦と天然酵母のこだわり
グランクールは、「国産小麦×天然酵母」というこだわりを全面に出しているお店です。実際にいただいたパンからは、噛み締めるたびに自然な甘みと香りがふわっと広がり、しみじみと「国産小麦って、やっぱり違うんだな」と感じられました。
フランスやカナダ産の小麦に比べて、国産小麦はグルテン量や風味が異なるため、加工の難しさもあると聞きます。しかし、その分だけ食べたときの豊かな香りや、粉の優しい甘みが味わえるのが国産小麦の大きな魅力。そこに、天然酵母の複雑で発酵によるほんのりとした酸味やお酒っぽい香りが加わり、一口ごとに深い味わいを感じられるパンに仕上がっているようでした。
2. フレンチトーストに見る職人技
今回特に興味を持ったのが、グランクールで人気だというフレンチトーストです。実は、私も過去にひとぱん工房でフレンチトーストを商品化しようと試みたことがありましたが、中までアパレイユ(卵と牛乳などを混ぜた液体)がしっかり染み込まず、なかなか納得のいく仕上がりにできずにやめてしまった経験があります。
ところが、グランクールのフレンチトーストは小さくカットしたハード系のパンを使っているため、アパレイユが染み込みやすく、一口サイズながらもふんわりジューシー。しかもハード系の生地なので、やわらかすぎず程よい弾力が残り、「甘くておいしいのに噛み締める楽しさがある」という絶妙のバランスを実現していました。
「天然酵母の味がちゃんと残っている」点も、非常に興味深かったです。一般的に甘いフレンチトーストは、パンそのものの風味が埋もれがち。しかし、あえてハード系パンのもともとの香りや酸味、粉の旨みが活かされるように作られていて、甘さだけでは終わらない独特の奥深さを感じました。
3. トランス脂肪酸フリーやアルミニウムフリーの安心
店内のパンフレットを見たところ、トランス脂肪酸フリーの油やアルミニウムフリーのベーキングパウダーを使用しているとのこと。こうした健康面への配慮は、私たちひとぱん工房のコンセプトとも通じます。素材選びからこだわることで、体に優しいパンを安心して提供できるのが魅力ですよね。

4. 変わり種のフルーツ使いも面白い
グランクールでは、赤すぐりの実が入ったデニッシュやタンカンという柑橘を皮ごと煮て乗せたパンなど、ちょっと珍しいフルーツを使った商品が印象的でした。トッピングに意外性のあるフルーツを合わせると、見た目にも鮮やかですし、天然酵母の奥深い味とフルーツの甘酸っぱさがうまくマッチしそうだなと感じました。
サンドイッチも人気らしいのですが、訪れたタイミングでは売り切れでお目にかかれず。次に行くときは、もう少し早めに行ってみようと心に決めました。
リビングコーヒー&ベーグルズの魅力

1. 直焙煎コーヒーとベーグル専門
2軒目に訪れた「リビングコーヒー&ベーグルズ」は、店名の通りコーヒーとベーグルに特化したお店です。こぢんまりとしたかわいらしい空間で、店内飲食用のカウンター席がわずかにあるものの、基本はテイクアウトスタイル。ふらっと立ち寄ってコーヒーを買うもよし、ベーグルを買うもよしというシンプルさが魅力的でした。
2. 見た目からは想像できない“しっとり&ずっしり”ベーグル
私が思っていたベーグルのイメージは、外側がやや硬めで、噛んだ瞬間にむぎゅっとした食感を楽しむもの。ところが、リビングコーヒー&ベーグルズのベーグルは、穴がほとんど見えないほど生地が詰まっていて、しっとりした仕上がりが特徴でした。
持ったときに「お、重い!」と思うくらいのずっしり感。しかし食べてみると、噛んでもそこまで強い引きはなく、どちらかというと詰まった生地のしっとり感がメイン。焼き色も薄めなので、生地自体の粉の香りを存分に味わえます。「ベーグルはこうあるべし」という固定観念を打ち破る、新鮮なスタイルでした。

3. インスタ映えを意識した具材
ベーグルの断面をカットすると、中に詰められたいちごやクリームチーズ、シナモンなどが美しく映えていました。お店の方に伺ったところ、写真映えもかなり意識しているとのこと。確かに、ベーグルは断面を見せるだけでも楽しく、SNSにシェアしたくなる要素がたくさん。素材の組み合わせも工夫されていて、食べ応えとビジュアルを両立しているのが素敵です。
4. コーヒーとの相性抜群
こちらでは、直焙煎コーヒーも人気の主力商品。カウンターで丁寧に淹れられたコーヒーの香りが漂う店内は、まさに「ここにちょこんと座ってベーグルをかじりたい!」という雰囲気でした。ベーグルのしっとりした甘みとコーヒーの苦味がとても合いそうだなと感じました。
ひとぱん工房の視点から
私たちひとぱん工房でも、国産小麦やトランス脂肪酸フリーの油など、素材へのこだわりを大切にしています。今回のドライブで、他店のパンを実際に食べて改めて思ったのは、使っている素材だけではなく、パン作りの工程や焼き方でも大きく仕上がりが変わるということ。特にフレンチトーストにおけるアパレイユの染み込み方や、ベーグルの独特な食感は、そのお店の工夫や個性がモロに出る部分だなと感じました。
私自身、フレンチトーストの開発では苦労が多く、一晩つけ込んだり、パンを押してみたり、色々やっても思うようにアパレイユが中まで染み込まない……という壁にぶつかったことがありました。でも、グランクールのようにパンのカットを工夫し、生地自体もハード系で風味に負けないようにするというアプローチがあるのだと分かり、目からウロコが落ちる気分でした。
ベーグルに関しては、リビングコーヒー&ベーグルズさんでしっとり&ずっしりタイプを味わい、「ベーグルってこんなにも奥深いんだ……」と再認識。しかもコーヒーとのペアリングを前提に開発しているのか、お店の一体感も素晴らしかったです。
今回の学びとパン作りへの活かし方
1. 小さくカットするフレンチトーストの発想
フレンチトーストといえば、食パンやブリオッシュなどのふんわりした生地に液を染み込ませるイメージが強いですが、カットサイズを変えるだけで、おいしさや食感のバリエーションが大きく広がることを学びました。家庭でも、大きなパンをまとめて一晩つけ込むのが難しい方は、ぜひひと口サイズにして染み込ませる方法を試してみてはいかがでしょう。
2. 日本の粉だからこそ出せる味
国産小麦はグルテンの性質が海外産の小麦と異なり、扱いがやや難しいとされますが、その分香りや甘みが豊か。天然酵母と組み合わせることで、パンそのものの複雑な風味をしっかり感じられます。子育て中の方や健康志向の方にとって、「体に優しいパン」を手に取れるお店があるのは嬉しいですよね。
3. ベーグルの奥深さ
ベーグルといえば表面のハリや弾力が印象的ですが、今回出会ったベーグルは、かなり異なるタイプでした。生地が白っぽく、やわらかさを重視したスタイルは、ベーグルの既存のイメージをいい意味で覆してくれます。ご家庭でベーグルを作るときも、茹でる時間や焼き色を調整して、自分好みの食感や風味を模索してみるのも楽しいですね。
4. 素材と調理法の組み合わせ
焼き色をしっかりつければ香ばしさが立ち、薄焼きにすればしっとり感が残る。コーヒーと合わせるか、ジャムを塗るか、具を包むか……。パンは同じ材料でも調理の工夫次第でガラリと姿を変えるのが面白いところです。これは私がひとぱん工房で日々感じていることでもありますが、他店のパンを食べると、新たな発見や意欲が湧いてきます。
おわりに
今回のドライブで訪れた2軒は、どちらも素材の良さと独創的な作り方を大切にしているお店でした。体に優しいパン作りを心がけるという姿勢には、私も共感しますし、もっといろいろ勉強してみたいと思いました。
パン屋巡りは、私にとっては趣味でもあり、パン作りのヒントを得る大切な時間でもあります。「こんなパンがあるんだ」「こういう組み合わせもありなんだ」と、新しい発想をいただくのが本当に楽しいんです。今回のフレンチトーストのアレンジや、しっとり系ベーグルの存在は、ひとぱん工房でも新メニュー開発のきっかけになるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。もし皆さんもドライブがてらパン屋さんを巡る機会があれば、お気に入りの食感や味に出会えるかもしれません。ぜひ、いろいろと試してみてくださいね。