「パンめぐ」の取材を受けたので、取材音声の書き出し
北海道の小麦粉を使い始めた理由
質問者:
国産小麦100%のパン屋さんというコンセプトがありますので、国産小麦に対する興味がかなり強い方だと自覚しています。
最初は九州の小麦粉ばかり使っていたんですね。
熊本産の「南のめぐみ」が気に入って、それを100%で使っていたんですか?
ひとみ店長:
そうです。本当に、私も一応修行はしてきたんですけど、そこまでがっつり仕込みとか生地作りに携わっていないまま勢いでお店を始めたので、最初は手探り状態でした。
初めの粉選びの時にブレンドとか普通の話なんですけど、そういう意識もなくて、ただただ「南のめぐみ」100%でやっていました。
全粒粉を3割混ぜるとか、そういうブレンドはしてたんですけど。
質問者:
九州産だけでなく、他にもいろんな小麦を食べたりしてる中で、味が全然違うって面白いなと感じて、「全粒粉食べ比べセット」っていう商品を作ったんですね。店のパンで何種類か?
ひとみ店長:
全粒粉をちょっと健康志向的に推していまして、その中で北海道の全粒粉、千葉の全粒粉、九州の全粒粉の3種類の全粒粉を食べ比べできる商品を作って、それが結構好評でした。
そこから、やっぱり好みもあるので、「こっちの小麦が美味しい」というお客さんもいたりして、九州にこだわらず、もっといろんな小麦を幅広く使ってみたいなと思い始めたんです。本当に去年あたりからブレンドを始めました。
質問者:
そこで今、「ゆめちから」、結構九州は中力粉に近い小麦が多いので、かなり高タンパクな特徴のある「ゆめちから」をブレンドすることにしたんですね。
ひとみ店長:
その流れで、小麦ってこんなに味が違うんだと感じて、自然に「どんだけ手間がかかってるんだろう」とか、職人として「今回のロットなんか違うな」とか「給水が違うな」と感じることもありました。
商品にならないことは全然ないんですけど、生産者さんと直接お話できたり、どんな人が作っているか顔を見れたりしたらいいなと思っていました。
去年の小麦ヌーヴォーツアーには参加できなかったんですが、九州の方に行って、熊本製粉さんのサイロとかを見させていただいて、すごい世界だなと感動しました。
そして、今回のツアーの案内が来て、参加したという感じです。
ライ麦を使ったパンのラインナップ
質問者:
今、ライ麦っていうのは全く使ってない状態ですか?
ひとみ店長:
使っています。ライ麦はすごい人気があって、くるみとレーズンを混ぜ込んだものが一番人気です。
香りもしっかりしていて、色も香りも味もライ麦らしさがあります。
フルーツバゲットという、レーズン4種類とオレンジピールといちじくが入った細いバゲットもあります。
あとは普通のプレーンのライ麦パンや、くるみだけ入ったライ麦パン、いちじくとゴルゴンゾーラチーズを包み込んだライ麦パンもあります。
質問者:
結構なライ麦パンをいろんな種類に作っているんですね。
ひとみ店長:
生地はライ麦の割合を3割で仕込んで、具材を変えていろんな種類にしています。残りが少ないですね。
質問者:
酸味とかが少ないんですか?
ひとみ店長:
少ないと思います。食べやすいかなと。
皆さん、酸味が苦手な方が多いので、ライ麦と聞くと酸味を思い浮かべて敬遠されることがあります。
でも、当店だとそれがなく皆さんに受け入れられています。
質問者:
大体お店全体パンの種類で、ライ麦パンの割合はどのくらいですか?
ひとみ店長:
パンは全部で約60種類くらいあります。
1日に400個弱くらい作っていて、そのうちの5種類がライ麦商品です。
質問者:
私、神奈川に住んでるんですけど、市川の方はライ麦パンとか健康志向のパンは結構売れますか?
ひとみ店長:
ライ麦パンはよく売れますが、硬いパンは敬遠される地域だと感じています。
バゲットとかフランス系の硬いパンは弱くて、柔らかいパンを焼いています。
ピーターパンさんという大きなチェーン店がある地域で、ボリュームがあって柔らかい庶民的なパンが人気ですね。
うちの店はピーターパンさんの100メートル横にありますwww
物件の都合で建ててしまったんですけど、差別化を図らないとダメだと思って健康志向でやっています。
質問者:
お客様は健康志向が強いんですね。
ひとみ店長:
はい。国産小麦やトランス脂肪酸不使用、お塩やお砂糖も精製されていないものを使っていることを謳っているからもあると思います。
一度、お店でアンケートを取った時に、8割が健康のために来店しているという結果が出ました。
「体に優しいから買っている」みたいな感じの内容だったんですよね。
質問者:
美味しいからですよね?体に良くても、美味しくなかったら食べたくないじゃないですか?
やっぱり、美味しくて体にいいっていうのが、ひとぱん工房さんの特徴なんでしょうね。
開業から5年目に入られたんですね。どこかパン屋さんに行かれたり(勤められたり)とかはされてたんでしょうか?
開業前のパン屋修行
ひとみ店長:
はい、4店舗で働きました。パン生地を仕込む経験が少し弱いかなと思って。
トータルで10年以上焼き場や成形には携わっていましたが、あまり修行せずに独学でパン屋さんを開いている方もいらっしゃるので、そういう方の影響を受けて、私もやってみようと思ったんです。
4店舗のうち2店舗は外国産小麦、2店舗が国産小麦を使っていました。
この2店舗の国産小麦が本当に良くて、外国産小麦の方はすぐに飽きてしまったんです。
美味しくないわけじゃないんですが、もういいやって感じてしまって。
でも、2店舗(国産小麦)はまた食べたくなる感覚があったので、国産小麦の方が美味しいなと感じて、自分の店では国産小麦を使おうと思いました。
質問者:
私もそうなんです。
国産小麦のパンに触れてから、外国産小麦と比べると、外国産小麦は後味がないというか、消えていく感じがします。
個性がないというか。国産小麦って甘みが感じられて、味わい深いんですよね。
あと水分量も関係あるんですかね?
もちっとしやすいという部分もあって、日本人好みなのかなと感じます。私も国産小麦が好きです。
ひとみ店長:
ありがとうございます。
ひとぱん工房の由来
質問者:
お店のこのひとぱん工房っていうのは、ひとみさんのお名前から?
ひとみ店長:
そうですね。
いろいろかんでるんですけど、一応「ひとみ」の「ひと」も取りつつ、私が健康志向になったのも、国産小麦イコール健康志向というよりかは、開業前に健康志向の方と出会って、いろいろな情報を得たからです。
パン屋さんで働いていたときに知らなかったことを、人とつながって得て、今のコンセプトができました。
なので、人と人とのつながりを大切にしたいという超単純な理由で、「ひと」という文字を取って「ひとぱん」になっています。
質問者:
いくつか意味が入ってたんですね?
ひとみ店長:
そうですね。
質問者:
これからお店を続けていく上で、何か目指していることや目標などございますか?
ひとみ店長:
国産小麦100%にこだわる理由は、自分が好きだからです。
もっと広げていきたいという思いがありますが、日本の自給率の低さを考えると、このまま国産小麦を使い続けられるか心配もあります。
国産小麦を消費すれば生産者さんも作り続けられるので、私は100%でやっていこうと思っています。
今は小規模で精一杯やっていますが、もっと生産量を上げたいと思っています。
小さいお店でへんぴな場所なので、来られるお客さんも限られています。
2店舗3店舗と規模を大きくして、国産小麦をたくさん消費して、その美味しさに気づく人たちを増やしたいです。
輸入小麦のポストハーベストなどで作られたパンを子供たちに知らずに買い与える若いお母さんたちにも、美味しいパンを提供して選んでもらいたいです。
価格が変わらなければ、体に良い方を選ぶでしょうし、リーズナブルな価格をコンセプトに入れていますが、それは工夫の連続です。
質問者:
リーズナブルって国産小麦とか健康にこだわると、どうしても普通よりも高くなりますよね。工夫が必要ですね。
ひとみ店長:
そうですね。前のままでは難しいですが、人気なものはそのままで、少しコストがかかるものは価格を上げるなどしてバランスを取っています。
質問者:
本当に私も安全なものや信頼できるお店で買ってほしいし、安心して食べたいですよね。
ひとみ店長:
そうなんですよね。いろいろ混じっていると、美味しいと感じる人が多いですが、ちゃんとしたものを食べ続けていると違うものが入っていると気付くようになります。
そういう違いをもっと知ってほしいです。
質問者:
ありがとうございます。お忙しいところ、すみません。