好きなこととお金の話

「ひとみ店長、好きなことを続けられるのはすごいですね」
そんな風に言ってもらえることがあります。
お客さんとの何気ない会話の中で、友人との雑談の中で。
私自身も、パンを作ることが大好きで、それが仕事になっているなんて幸せだなぁと思うことがよくあります。
でも、この「好きなことを続ける」ということは、時にしんどくなることもあるし、続けるためにはいくつか工夫が必要だと感じています。
今日はその中でも、「お金の話」をしようと思います。
お金って、見えないストレスの原因になることがありますよね。
私も20代の頃は、そのストレスと向き合いながら生きていました。
パン屋を始めようと決めた頃の私は、「とにかく稼がないと!」と焦っていました。
「早く資金を貯めなきゃ」「もっと稼がなきゃ」と追い立てられるようにパンを焼いていて、気づけば大好きなはずのパン作りが、苦しく感じる瞬間もありました。
でも、ある日ふと立ち止まって考えたんです。
「私は何のために稼いでいるんだろう?」
お金を集めること自体は悪いことじゃないし、必要なことです。
でも、集め続けることに終わりはないし、きっとずっと追いかけていても満足する日は来ない。
だから、考え方を少し変えてみました。
「私が好きなことをして生きるために、本当に必要なお金ってどれくらいだろう?」
家賃、光熱費、材料費、生活費――。
そして、パンを焼くために必要な小さな幸せ。
新しいオーブンを買ったり、休日に他のお店に勉強に行ったりする時間も含めて。
ひとつひとつ書き出してみると、「あ、これくらいあれば私は十分幸せなんだな」と気づいたんです。
今までの不安は、具体的に「いくら必要なのか」がわからないから生まれていたんだなと気づきました。
それからは、心の中の焦りや不安が少しずつ薄れていきました。
もちろん、お金が足りなくなる不安は誰にでもあると思います。
私も20代の頃は「お金がなくなったらどうしよう」と最悪のシナリオばかりを想像して、怖くなっていました。
そんな時、信頼できる人の話や本を読んで、こう教えてもらったんです。
「お金がゼロになっても、死なない」
これ、当たり前のようでいて、意外と気づいていないことかもしれません。
日本には最低限の衣食住を守ってくれるセーフティーネットがある。
だからこそ、「失敗しても死なない」と知れたことで、私の心は少し軽くなりました。
「失敗しても大丈夫。だから挑戦してみよう」
そう思えたら、パン屋の仕事もお客さんとの会話も、もっと楽しく、もっと素直に向き合えるようになったんです。
好きなことを仕事にするのは、簡単じゃない時もあります。
でもだからこそ、私は今、毎日パンを焼けるこの時間を大切にしたいと思っています。
お金はその一部であり、あくまで「好きなことを守るための工夫」。
これからもひとつひとつ、小さな工夫を重ねながら、ひとぱん工房で国産小麦のパンを焼き続けていきます。
皆さんにも、何か好きなことを続けるヒントになれば嬉しいです。