【パン屋巡り】感動の味!浜松「ラトリエテンポ」の薪窯パンが美味しすぎた話
今回は、パン作りの勉強のために、静岡県浜松市にあるパン屋さん「L’atelier de “Tempo”(ラトリエ テンポ)」さんへ行ってきました!
私が目指している、小麦の味を活かした素朴で美味しいパン作りのヒントを探しに訪れたのですが、そこには想像をはるかに超える感動がありました。
ご主人が自ら作ったという薪窯、お店の横で小麦を育てるという壮大な夢、そして何より、命がけでパンと向き合うその情熱に、心を強く揺さぶられました。
なぜ私が静岡・浜松のパン屋さんへ?「ラトリエテンポ」さん訪問のきっかけ

日頃から、お客様にもっと美味しいパンをお届けしたいという想いで、パン作りについて勉強しています。特に私は、小麦そのものの風味をしっかりと感じられるような、素朴で味わい深いパンが大好きで、自分のお店でもそういったパン作りを目指しているんです。
お休みの日は、よく他のパン屋さんへ足を運んで、どんなパンを作っているのか、どんなこだわりがあるのかを勉強させていただいています。私の好みもあって、自然とハード系のシンプルなパンを置いているお店に惹かれることが多いですね。
そんな中で、気になっていたのが、今回訪れた静岡県浜松市にある「ラトリエテンポ」さんでした。
手作りの薪窯でパンを焼いている、というお話を聞いて、一体どんな味がするんだろう?と興味津々だったんです。ちょうど静岡に立ち寄る機会があったので、「これは絶対に行くしかない!」と、お店を目指しました。
命がけのパン作り!手作りの薪窯と自家栽培小麦への情熱

お店に到着し、パンを選んでいると、幸運にも店主さんとお話しする機会がありました。そこで伺ったお話は、私の想像をはるかに超えるものでした。
なんと、パンを焼いている薪窯は、店主さんご自身が作ったものだというのです!
工房も見せていただいたのですが、そこはまさに情熱の塊のような場所でした。薪窯は、一度火を入れると全体が熱の塊になります。例えるなら、巨大な暖炉のある部屋にいるような感覚。工房内の温度は夏は50度近くまで上がることもあるそうで、まさに命がけの作業です。
「エアコンはつけないんですか?」とお聞きしたところ、「フィルターがすぐに詰まって壊れてしまうから」とのこと。そのため、水を循環して体を冷やす「冷水ジャケット」という特殊な服を着ながら、毎日パンを焼いているそうです。あまりの暑さに、隣に水の張ったプールを用意して、本当に危険を感じたときには飛び込むこともあるのだとか…。
ガスオーブンや電気オーブンは、スイッチ一つで温度が上がり、切ればすぐに下がります。しかし、石でできた薪窯は、一度温まると熱がなかなか抜けません。その分、遠赤外線の効果でパンの芯までじっくりと火が通り、外はパリッと、中はもっちりと焼き上がるのです。この美味しさを生み出すために、毎日過酷な環境でパンと向き合っている店主さんの姿に、同じパン職人として、ただただ頭が下がる思いでした。
さらに驚いたのは、お店の横に広がる土地のこと。
「いずれは、ここで自分たちの手で小麦を育てて、その小麦でパンを焼きたいんです」と、店主さんは夢を語ってくださいました。
まだ土壌が十分に育っていないため、すぐにパンにできるほどの収穫は難しいそうですが、すでにご自身で種をまき、試行錯誤を重ねているとのこと。工房から、店内から、黄金色の小麦畑が広がる…。そんな素敵な光景が目に浮かぶようで、聞いているだけでワクワクしてしまいました。
パン作りへの計り知れない情熱と愛情に、大きな刺激と感動をいただいた訪問でした。
薪窯で焼かれた絶品パンたちを実食レポート!
さて、そんな情熱のこもったパンをいくつか購入させていただきました。焼きたての香りに包まれながら、さっそく車の中でいただくことに!ここからは、私が感動したパンたちを一つずつレポートしていきます。
優しい甘さが体に染みる「ハチミツとミルク」

まず最初にいただいたのは、ほんのり甘い香りがする食パンです。
「はちみつと牛乳」という名前の通り、素朴なパンの中では副材料が少し多めの、リッチなタイプの食パンかな?という印象でした。
一口いただいて、まず驚いたのが小麦の風味の力強さです。
生地には「全粒粉(ぜんりゅうふん)」が使われていました。
【豆知識】全粒粉とは?
小麦は、「胚乳(はいにゅう)」「胚芽(はいが)」「表皮(ひょうひ/ふすまとも言います)」の3つの部分からできています。私たちが普段よく目にする白い小麦粉は、胚乳だけを粉にしたもの。
それに対して全粒粉は、この3つの部分をすべて丸ごと粉にしたものです。栄養価がとても高く、食物繊維や鉄分、ビタミンB1などが豊富に含まれています。独特の香ばしい風味と、ぷちぷちとした食感が特徴なんですよ。
ラトリエテンポさんの食パンは、この全粒粉がかなり粗挽きで、生地の中にぷちぷちとした粒がはっきりと見えるほど。噛むほどに、小麦の香ばしさが口いっぱいに広がります。
そして、その力強い小麦の風味を、牛乳とはちみつの優しい甘さがふんわりと包み込んでくれます。甘い系の食パンですが、決してくどくなく、後味はすっきり。これは、薪窯で焼いているからこそ引き出せる小麦の甘みと、素材の甘さが絶妙にマッチしているからなのでしょう。
生地は高加水で、とてもしっとり、もっちりしています。高加水とは、パン生地に含まれる水分量が多いということ。これにより、パサつきにくく、みずみずしい食感になるんですよ。
夢中で食べてしまいました。これは毎朝食卓にあったら幸せになれる食パンですね。
小麦の力強さを感じる!外カリッ中もちの「自家製酵母ドーナツ」

次にご紹介するのは、ころんと可愛い形のドーナツです。
プレーンなタイプと、中にフィリングが入ったタイプの2種類がありました。
これはフランスで「ベニエ」と呼ばれる、揚げパンに近いお菓子。ベニエは四角い形が一般的ですが、こちらはドーナツらしく丸状に成形されていました。
まず、プレーンな方からいただきます。
持った感じは、ずっしりと重みがあり、生地がしっかり詰まっているのが分かります。
一口かじると、「カリッ!」と小気味よい音が。
表面はしっかりと揚がっていて香ばしく、中は驚くほどもっちり、しっとり。この「外はカリッ、中はもちっ」という食感のコントラストがたまりません!
そして何より、ここでも小麦の味が本当に濃いんです。
よくあるドーナツは、お砂糖の甘さやふわふわとした食感がメインですが、このドーナツは主役が完全に「小麦」。噛めば噛むほど、小麦本来の甘みと風味がじわじわと広がってきます。
さらに、発酵には自家製の天然酵母が使われているため、単調な甘さではなく、酵母由来の複雑で奥深い風味が感じられます。
スーパーやコンビニで売られているパンは、どうしても小麦の個性が感じられにくいことが多いのですが、このドーナツはまさにその対極。これだけ小麦の味がしっかりしていると、他の素材に負けることなく、むしろお互いを高め合って、より一層美味しくなるんです。
もう一つのドーナツには、「ルバーブ」のジャムが挟んでありました。
【豆知識】ルバーブとは?
見た目はフキに似ている、赤くて酸っぱい野菜です。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、ヨーロッパ、特にフランスではタルトやジャムの材料としてポピュラーな食材。加熱するとトロリと溶けて、爽やかな甘酸っぱさが特徴です。食物繊維が豊富で、美容と健康にも良いと言われていますよ。
このルバーブの甘酸っぱさが、小麦の風味が強いもっちりとした生地と相性抜群!甘すぎないので、お子様のおやつにもぴったりな、優しい味わいでした。
ひとぱん工房でも、こんな風に小麦の味をしっかり楽しめるドーナツが作れたら素敵だな、と新たな目標ができました。
これまでで一番美味しい!感動の「オーガニックレーズンとオレンジピールのカンパーニュ」

そして、最後にいただいたのが、この日一番の衝撃を受けた「カンパーニュ」です。
カンパーニュとは、フランス語で「田舎パン」という意味。ライ麦粉を少し加えた、素朴で大きなパンです。
お店には、シンプルなカンパーニュの他に、いくつか種類がありましたが、私は「オーガニックレーズンとオレンジピールのカンパーニュ」を選んでみました。
ラトリエテンポさんでは、この大きなカンパーニュを「量り売り」で販売されていました。好きな大きさにカットしてもらえるのは嬉しいですよね。
まずは、何も入っていないプレーンな生地の部分から一口。
「……美味しい!」
思わず声が漏れてしまいました。
口に入れた瞬間に広がる、天然酵母ならではの複雑で豊かな香り。これは、市販のイーストでは決して出すことのできない、深く、そしてどこかフルーティーな香りです。
生地は高加水で、驚くほどふわふわ、そしてしっとり。ハード系のパンというと、硬くて食べにくいイメージがあるかもしれませんが、このカンパーニュはとても柔らかく、食べやすいんです。
そして、小麦とライ麦の香ばしい風味が鼻に抜けた後、追いかけるようにジューシーなレーズンの甘みと、爽やかなオレンジの香りがやってきます。まるで三段階の美味しさの波が押し寄せてくるよう!同行したジャム兄も「これはウマい!」と大絶賛していました。
私が特に好きなのが、しっかりと焼き込まれた「皮(クラスト)」の部分。薪窯の高温で一気に焼き上げられた皮は、バリっと硬く、噛みしめるほどに香ばしさと旨味があふれ出します。この皮の部分と、しっとり柔らかい中の生地(クラム)の部分との対比が、ハードパンの醍醐味ですよね。
素材の組み合わせ、食感、香り、そのすべてが完璧なバランスで、店主さんの技術の高さとパンへの愛情がひしひしと伝わってきました。
大きなパンはなぜ美味しい?パン職人がこっそり教える豆知識

ラトリエテンポさんのカンパーニュを食べて、改めて「大きなパンって美味しいな」と感じました。
実はこれには、ちゃんと理由があるんですよ。
パンは、生地の塊(分割重量)が大きければ大きいほど、美味しく焼き上がると言われています。
不思議に思うかもしれませんが、理由はとてもシンプル。
小さなパンは、焼いている間に生地の中の水分が外に逃げやすいので、どうしても少しパサっとした仕上がりになりがちです。
一方で、大きなパンは、表面積に対して体積が大きいので、中心部の水分が保たれたまま焼き上がります。
その結果、外の皮はパリッと香ばしいのに、中はしっとり、もっちりとした理想的な食感になるのです。
ラトリエテンポさんのカンパーニュが、あれほどみずみずしく、しっとりしていたのも、大きなサイズでどーんと焼いているからなんですね。
ひとぱん工房でも、カンパーニュは人気商品の一つですが、今まではお客様が買いやすいように、少し小さめのサイズで焼いていました。でも、今回の経験で、「本当に美味しいパンを届けるためには、大きく焼くことも大切なんだ」と再度気づかされました。
お店のオペレーションを考えると、量り売りは少し難しいかもしれませんが、例えば大きく焼いたものをカットして販売するなど、何か新しい方法を取り入れてみたいな、と考えています。
今回のパン屋さん巡りで得た学びと「ひとぱん工房」のこれから

今回のラトリエテンポさんへの訪問は、私にとって本当に大きな学びとなりました。
手作りの薪窯で、命がけでパンを焼く店主さんの情熱。
自分たちの手で小麦を育て、パンにするという壮大な夢。
そして、素材の味を最大限に引き出した、力強く優しいパンの味。
すべてが、私のパン職人としての魂を強く揺さぶりました。
「美味しいパンを作りたい」という気持ちは、どこのパン屋さんも同じだと思います。でも、そのアプローチは様々で、正解は一つではありません。
すぐに薪窯を作ることはできませんが、今回の訪問でいただいたたくさんの刺激とインスピレーションを胸に、ひとぱん工房のパンを、もっともっと美味しくしていきたい。
毎日食べても飽きない、そんなパンを皆さんの食卓にお届けできるように、これからも頑張ります!
まとめ|パン旅は最高のインプット!
今回は、静岡県浜松市の素敵なパン屋さん「ラトリエテンポ」さんをご紹介しました。
美味しいパンを食べることはもちろん、作り手の想いや情熱に触れることができる「パン屋さん巡り」は、私にとって最高の勉強であり、リフレッシュの時間です。
この記事を読んで、「ラトリエテンポさんに行ってみたい!」「ハード系のパンを食べてみたい!」と思っていただけたら、とても嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
店舗情報|L’atelier de “Tempo”(ラトリエ テンポ)
ご訪問の際は、営業時間や定休日を公式サイト等でご確認いただくことをお勧めします。
- 住所: 静岡県浜松市浜名区細江町中川6880-1
- 営業時間: 10:00~17:00
- 営業日: 金曜日、土曜日、日曜日、月曜日(不定休あり)
※最新の情報は、お店の公式情報をご確認ください。https://lateliertempo.com