ひとぱん工房が企画品を使わない理由「パン屋の裏側」
こんにちは!ひとみ店長です。
パン屋を経営していると、新商品開発をサポートしてくれるようなサービスがいろいろあることを知ります。
その中の一つには、企業が開発したパン屋さん向けの便利な既製品があり、レシピとセットで企業から提案をされることもあります。
特にパン業界では、商品に専売特許というものはなく、いいアイデアは瞬く間に広がったりして、どこが最初に考えたのかわからない、というようなものも多くあります。
私の中で色々なパン屋さんで多く見てきた「メープルラウンド」という商品についてのお話をしたいと思います。
メープルラウンドパンの秘密
「メープルラウンド」は、メープルシート(下画像)というメープル味の進展性の高い油脂?を、柔らかめの生地に織り込んで、ラウンド型という円柱形の型で焼いたパンです。

「メープルラウンド」と呼んでいないパン屋さんもあります。
パンがお好きで、よくパン屋さんに行かれる方は、一度は見たことがあるかもしれません。

私の最初の修行店では「メープルラウンド」は一番人気の商品でした。
焼き上がると、メープルの香りが店内中に広がって、柔らかい食感、どこをかじってもメープルの味が楽しめ、食パンのようにカットしてもいいし、ちぎって食べても面白い。
メープル味が得に人気ですが、チョコ味シート、バニラ味シートなどもあり、「○○ラウンド」という形で、どんどん棚の割合を占めていくようになりました。
まだ右も左もわからない当時の私にとって、この「メープルラウンド」は、小さなパン屋が当てた奇跡のような救世主商品だと思っていました。
しかし、他のパン屋巡りをすることで、他のパン屋さんでも同じ「メープルラウンド」を何度も見ることで、最初の修行店の店主がレシピを買った?か譲ってもらったか?提案されて、その為にシートと型を買って投資した商品だということがわかりました。
投資するのであれば、可能性を感じないとできませんので、卸売業者の商品プレゼンがあったり、「メープルラウンド」の美味しさを多くのパン屋オーナーに知ってもらい、うちでもやろう!という流れが多くあったのではないか、と推測します。
ひとぱん工房が企画品をなるべく使わない理由
ひとぱん工房にも、卸売業者さんや企業さんからの提案は何度も来ます。
多いのは、生地に絞って焼くだけの汎用性の高いクリームなどでしょうか。
ひとぱん工房にとっては、沢山売れるか、生産ラインにのせれるか、同じクオリティが作れるか(これは誰でも作れるようなレシピになっている)などは重要視していません。
それよりも、材料に使いたくないものが入ってないか?ということが最重要ポイントなので、業者さんから提案されても採用する企画品は少なく、提案レシピもそのままの商品が並ぶことはなく、オリジナル創作をしています。
今まで業者さんから提案を受けて採用した商品は、「大豆バター」を使った「豆乳コッペパン」「ふわふわちぎりぱん」や的場製餡さんの「季節あんこ」を使った「栗あんぱん」や「桜あんぱん」などです。

企画品は、より簡単に、美味しいと感じる味付けで、使いやすく、日もちががいい、というような機能が必要とされているため、どうしても添加物、保存料などが多くなってしまいます。
例えば、パンの間にホイップクリームをたっぷり絞った菓子パン商品が、店内常温棚に陳列されているのをよく見ます。
本来生クリームであれば、五度以下で保存しておかなければ、生クリームが溶けます。
ですがずっと常温で大丈夫なのは、それは生クリームではなく植物油だからです。
パン屋さんにとっては冷蔵する電気代のコストを削減したいですし、食中毒も起こしたくありません。
常温でも安全で長く状態が維持できて美味しいと感じるホイップは、夢のような既製品です。
私は「フェイクホイップ」と呼んでいます。
もしくは以前もブログに書いた、卵も牛乳も入っていないまるでカスタードを「フェイクカスタード」とも呼びます。
企画品は、いかに安全で、使いやすく、売れやすいか?ということを考えた商品ということです。
ひとぱん工房が、そのような商品を使わないのは、否定しているわけではなく、本物の食材をつかった商品を食べたい、というお客様に向けて商品を作っているので、作らないし使わない。というだけです。
そのような商品を使い、外国産小麦(カナダ・アメリカ・オーストラリア産)の価格の安い粉でパンを作れば、ひとぱん工房は、利益を1.5倍にすることができるでしょう。。。
でも、そのパンを私は売りたいとは思いません。
話は逸れてしまいましたが、新商品を考えるのが苦手な店主、または売れる利益率の高い商品を考えるのが苦手な店主にとっては、とてもありがたいサービスではあると思います。
これからも、ひとぱん工房では、美味しくて温かみのあるパンを提供することを目指して日々精進していきたいと思います。
業者さんと連携し、お客様が共感できる商品やサービスを考案することで、お客様に喜んでいただけるパン屋さんであり続けます。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。