【仕事の悩み】職場で褒められないあなたへ。ギャル講師に教わった「褒める」がもたらす魔法
こんにちは、「ひとぱん工房」の店長ひとみです。
先日、「新入社員として頑張っているのに、職場で誰も褒めてくれない」という切実なご相談をいただきました。「できても当たり前、失敗したら怒られる…」そんな環境で、モチベーションを保つのは本当に大変なことですよね。
実は、パン職人としての修行時代の私も、褒められた経験はほとんどありませんでした。しかし、そんな私が今、お店で「褒める」ことを大切にしているのには、ある大きなきっかけがあります。それは、高校時代のアルバイト先で出会った、一人の「ギャル講師」の存在でした。
はじめに:「職場で誰も褒めてくれない…」新入社員さんの切実な悩み
先日、リスナーさんから、こんなお悩みが届きました。
「新社会人として働き始めたのですが、職場で誰も褒めてくれません。できても『普通』で、失敗したら怒られる。できたことに対して『すごいね!』『助かったよ!』のようなポジティブな反応が全くなくて、やりがいを感じられません…」
このお話を聞いて、私は胸が締め付けられるような思いでした。新しい環境で、右も左もわからない中、一生懸命頑張っているのに、誰からも認められないのは、本当につらいことですよね。
特に社会人1年目だと、周りの先輩や上司にとっては「当たり前」の業務でも、本人にとっては初めてのことばかり。一つひとつ覚え、ゼロから挑戦しているわけです。それなのに、できて当たり前という雰囲気では、心が折れそうになってしまうのも無理はありません。
実は、このお悩み、私自身の過去の経験とも重なる部分がたくさんあるんです。
私も褒められた経験がありませんでした。パン屋の厳しい修行時代
今でこそ、自分のお店「ひとぱん工房」でスタッフと一緒に楽しくパンを焼いていますが、私もパン職人としてのキャリアをスタートさせた当初は、まさに「褒められない」環境にいました。
パンの世界は、昔ながらの職人気質な方が多い業界です。私が修行していたお店も例外ではなく、ミスをすれば厳しく叱責され、できて当たり前のことは、誰からも何も言われない、というのが日常でした。
もちろん、お給料が上がったり、任せてもらえる仕事が増えたりと、行動に対する「評価」はありました。でも、「ひとみちゃん、このパンの成形、すごく上手になったね!」とか「いつも早く来て準備してくれてありがとう」といった、温かい言葉での承認は、ほとんど記憶にありません。
私自身、もともと「褒められべた」なところもあって、「仕事なんだからできて当たり前だよね」と自分に言い聞かせ、褒めてもらえないことに大きな不満を抱いていたわけではありませんでした。
でも、今回のご相談をきっかけに改めて振り返ってみると、もしあの頃、ほんの少しでも褒め言葉があったなら、もっと前向きな気持ちで、もっと楽しく仕事に取り組めていたかもしれないな、と感じるのです。
そんな私が、なぜ今、自分のお店で「褒める」ことを大切にするようになったのか。その原点には、パン屋さんとは全く違う、ある場所での忘れられない出会いがありました。
人生を変えた出会い!高校時代のアルバイトで学んだ「褒める」ことの威力
話は、私がまだ高校生だった頃に遡ります。
当時、私はファミリーレストランで接客のアルバイトをしていました。
大手のお店だったので、お客様の前に立つ前に、まずは教育係の先輩から接客のイロハをみっちり教わる研修がありました。お辞儀の角度から言葉遣いまで、覚えることはたくさん。その研修を担当してくれたのが、私の人生に大きな影響を与えることになる、一人の女性でした。
正直、第一印象は衝撃的でした。
当時の私から見ても「ギャル」!爪も長くて、キラキラしていて、「本当にこの人が飲食店の先輩?」と思ってしまったくらいです(今思うと本当に失礼ですよね、ごめんなさい!)。
でも、いざ研修が始まると、その印象は180度覆されました。
とにかく、教え方が抜群に上手だったのです。
彼女は、ただマニュアル通りに教えるのではありませんでした。常に笑顔で、ユーモアを交えながら、こちらのやる気をぐんぐん引き出してくれる天才だったのです。
そして、彼女が最も大切にしていたのが、「褒める」ことでした。
「すごいすごい、できたやん!今の笑顔、めっちゃいいよ!」
「そうそう、その調子!次も絶対できるって!」
一つひとつの動作ができるようになるたびに、満面の笑みでそう言ってくれるのです。関西出身の方だったので、その明るいイントネーションも相まって、褒められるたびに心がパッと明るくなり、「もっと頑張ろう!」という気持ちが自然と湧き上がってきました。
彼女のトレーニングのおかげで、私は「接客ってなんて楽しいんだろう!」と心から思えるようになり、アルバイトに行くのが毎日楽しみで仕方ありませんでした。苦手だったことさえ、彼女に褒めてもらううちにいつの間にか得意になっていたくらいです。
後から知ってさらに驚いたのですが、実はこの「ギャル講師」の先輩、私が研修を受けた時点ではすでにお店を退職されていたそうなんです。でも、彼女の指導力がずば抜けていたため、「あの子に教えてもらうと、新人さんがすぐに成長して、しかも辞めずに長く続けてくれる」と、店長が無理を言って、特別に教育係をお願いしていたというのです。
彼女がお店にもたらしたプラスの影響は、計り知れないものがあったのだと思います。
名前も知らない、短い期間だけの関わりでしたが、彼女が教えてくれた「褒めることの威力」は、私の心に深く、深く刻まれました。そして、いつか自分が誰かに何かを教える立場になったら、必ずあの時の彼女のように、相手を認め、褒め、やる気を引き出せる人になろうと、心に誓ったのです。
なぜ「褒める」ことが大切なの?お店の空気が変わる魔法の言葉
「でも、褒めなくたって仕事は回るじゃないか」
そう思う方もいるかもしれません。確かにその通りです。指示を出して、業務が遂行されれば、組織としては機能します。
ではなぜ、私はそこまで「褒める」ことにこだわるのでしょうか。
それは、褒めることには、仕事が回る以上の、計り知れないメリットがあると確信しているからです。
褒めることは、相手への最高のエネルギー補給
まず、人は誰でも「認められたい」「必要とされたい」という気持ちを持っています。これは、心理学でいうところの「承認欲求」ですね。
もちろん、私たちは生活のためにお金を稼ぎますが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、「誰かの役に立っている」という実感や、「あなたがいると助かる」という言葉を求めているのだと、私は思います。
疲れている時や、余裕がない時に相手を褒めるのは、確かにエネルギーが必要です。自分の仕事に集中するのとは別に、「相手を見る」ための心の余裕が求められます。
でも、勇気を出して伝えた「ありがとう」や「すごいね」の一言が、相手の心に火を灯し、明日への活力になるのなら、それは素晴らしいことだと思いませんか?
「あなたをちゃんと見ていますよ」というメッセージを伝えること。それが、相手のやる気を引き出し、結果としてお店全体のパフォーマンスを向上させることに繋がるのです。
「心理的安全性」が、挑戦できる土壌をつくる
最近よく耳にする「心理的安全性」という言葉をご存知でしょうか。
これは、「この組織の中では、失敗したり、自分の意見を言ったりしても、罰せられたり、人間関係が悪くなったりすることはない」と、メンバーが安心して感じられる状態のことを指します。
実は、「褒める」文化は、この心理的安全性と深く関わっています。
「できても当たり前、失敗したら怒られる」という環境では、人は「失敗してはいけない」というプレッシャーに常に晒されます。するとどうなるか。失敗を恐れるあまり、新しいことに挑戦できなくなったり、ミスを隠そうとしたりするようになります。
そして皮肉なことに、「失敗しちゃダメだ」と思えば思うほど、緊張で視野が狭くなり、かえって失敗を引き起こしやすくなってしまうのです。
一方で、「よく見てたね!」「ナイスチャレンジ!」といった言葉が飛び交う、褒める文化のある職場ではどうでしょう。
そこには、「失敗しても大丈夫。みんなでカバーし合おう」という安心感が生まれます。スタッフは萎縮することなく、のびのびと自分の力を発揮できます。万が一ミスをしてしまっても、すぐに報告・相談できる風通しの良い環境なので、問題が大きくなる前に対処することができます。
結果として、褒める文化は、スタッフ一人ひとりの成長を促し、職場全体のミスを減らすことにも繋がるのです。
叱る前に考えたいこと。私の苦い経験から学んだ「怒らない」教育
「褒める」ことと対極にあるのが「怒る」ことです。
もちろん、社会人として、お店の一員として、絶対にやってはいけないことをした時には、厳しく指導することも必要です。
しかし、私はできるだけ「怒る」という手段は使いたくないと考えています。
これには、私自身の苦い経験が関係しています。
修行時代、一度だけ寝坊をしてしまい、お店に大遅刻をしてしまったことがありました。パン屋の朝は早く、一人の遅れが全体の工程に大きく影響します。私はシェフから、今までにないほど厳しく叱責されました。
「遅刻したらクビだと思え」
その言葉と、シェフの厳しい表情が、私の心に深く突き刺さりました。
それ以来、私は「遅刻してはいけない」という強迫観念から、夜中に何度も目を覚ましてしまうようになったのです。1時間ごとに「ハッ!」と飛び起きては時間を確認する、ということを朝まで繰り返すのです。眠っているようで、全く熟睡できていない状態が続きました。
もちろん、遅刻をした私が100%悪いのです。シェフの厳しさは、プロとしての自覚を促すためのものだったでしょう。
しかし、あの経験を通して、過度な恐怖心は、人を健やかに成長させるどころか、心身を蝕んでしまう危険性があることを、身をもって知りました。
だからこそ、ひとぱん工房では、スタッフに同じような思いをさせたくない、と強く思っています。
ミスをした時、一番落ち込み、反省しているのは、他の誰でもない本人です。
遅刻をしてしまったら、「申し訳ないことをした」と本人が一番感じています。
そこに追い打ちをかけるように「なんで遅刻したんだ!」と怒鳴る必要が、果たしてあるでしょうか。
それよりも、
「店長を悲しませてしまった。もう二度とこんな思いはさせたくない」
「こんなに素敵な職場に迷惑をかけてしまった。次は絶対に時間通りに来よう」
そんな風に、信頼関係に基づいたポジティブな動機で、自ら行動を改善していけるような関係性を築くことの方が、ずっと大切だと私は考えています。
スタッフ一人ひとりが、心も体も健康で、心に余裕を持ってお客様と向き合える。そんな優しい現場を作ることが、私の目標です。
まとめ:もしあなたが今、「褒められない」環境にいるなら
今回は、「職場で褒められない」というお悩みにお答えする形で、私の経験と、ひとぱん工房で大切にしている教育方針についてお話しさせていただきました。
今、まさに当時の私と同じように、誰からも認められず、つらい思いをしている方もいらっしゃるかもしれません。
すぐに職場環境を変えるのは、難しいことだと思います。
でも、もしこの記事を読んで、少しでも共感していただけたなら、一つだけ試してみてほしいことがあります。
それは、あなたが「褒める人」になることです。
今はまだ後輩がいないかもしれません。でも、2年目、3年目になった時、必ずあなたの後ろに続く人が現れます。その時、ぜひ、その子の小さな「できた!」を見つけて、言葉にして伝えてあげてください。
「〇〇さん、この資料すごく分かりやすいね!ありがとう!」
「今の電話対応、とても丁寧でよかったよ」
あなたが発した温かい言葉は、きっとその子の心に灯りをともすはずです。
そして、あなたが始めたその小さな「褒める」の輪は、少しずつ職場全体に広がり、やがては全体の空気を変える力になるかもしれません。
あなた自身が、かつての私にとっての「ギャル講師」のような存在になるのです。
誰もが認められ、安心して挑戦できる。
ひとぱん工房が、あなたの職場が、そして世界全体が、そんな温かい場所になることを、心から願っています。