【試作秘話】パン屋が作る本気の焼きドーナツ!ふわふわジューシー食感の秘密と開発の裏側を大公開
今回は、長らく試作を続けてきた新作「焼きドーナツ」について、その開発の裏側をこっそりお話しちゃいます。
目指したのは、パンの延長線上にあるものではなく、お菓子のように軽やかで口どけの良い、まったく新しい食感のドーナツ。美味しさを追求するあまり、成形が困難なほど生地がゆるくなってしまうなど、たくさんの壁にぶつかりました。
この記事では、そんな試行錯誤の末にたどり着いた、「焼き」なのにまるで「揚げ」たかのようなジューシーさを実現した秘密や、今後の展開として考えている「究極のホイップドーナツ」の構想まで、余すところなくお伝えします。
近いうちに店頭に並ぶ予定の、新しい仲間をどうぞお楽しみに!
新作ドーナツ、ついに完成間近です!
いつも「ひとぱん工房」をご愛顧いただき、本当にありがとうございます!店長のひとみです。
今日は、いつもお店に足を運んでくださる皆さまに、ワクワクするようなお知らせがあります。実は、長い間工房にこもって試作を重ねてきた新しい商品が、いよいよ完成間近なんです!
その名も…(まだ仮ですが)「焼きドーナツ」です!
「パン屋さんでドーナツ?」と思われるかもしれませんね。
今回私が作りたかったのは、よくあるパン生地を丸めて揚げた、というものではありません。パンとお菓子のちょうど中間のような、今までの「ひとぱん工房」のラインナップにはなかった、まったく新しい食感を持つ一品です。
生地にはパンと同じようにイースト菌を使って発酵させているので、分類としては「イーストドーナツ」。ふんわりとしたパンの良さを持ち合わせながらも、口に入れた瞬間の軽やかさや、後を引く美味しさは、まるでお気に入りの焼き菓子を食べたときのような幸福感を目指しました。
YouTubeの試作動画では「試作第24弾」なんて言っていますが、実際はドーナツだけで4回ほど真剣に試作を繰り返してきました。ようやく皆さまにお披露目できる形が見えてきて、私自身、今からとても楽しみにしています。
目指したのは「パン」ではなく「お菓子」のような口どけ
今回、私がドーナツ開発で一番こだわったポイント。それは、「パンのような満足感」よりも「お菓子のような口どけの良さ」を優先することでした。
「ひとぱん工房」のパンは、国産小麦の風味をしっかり感じていただけるよう、どちらかというともっちり、しっかりとした食感のものが中心です。それはそれで、私自身が大好きで、自信をもってお届けしている自慢の商品たちです。
でも、ドーナツに求めるものって、少し違います。
特に、お昼下がりのほっと一息つきたい時間や、頑張った自分へのご褒美に食べたい「おやつ」としては、もう少し軽やかで、優しい甘さが恋しくなりませんか?
そんなシーンを想像したとき、私が作りたいドーナツのイメージが固まりました。
それは、「素朴でシンプルなパン」ではなく、「口にした瞬間、思わず顔がほころぶような、とろけるお菓子」に近い存在でした。
この理想の食感を実現するために、配合を何度も何度も調整しました。
小麦粉の種類、水分量、油脂のバランス…。ほんの少しの違いで、食感は全くの別物になってしまいます。目指す口どけに近づけば近づくほど、生地は繊細で扱いにくくなっていきました。
開発の壁!美味しさを追求したら生地が「ゆるゆる」に…
理想の「お菓子のような口どけ」を追求した結果、私は大きな壁にぶつかりました。
それは、生地が「成形できないくらいゆるゆる」になってしまったことです。
パン作りをされたことがある方なら共感していただけるかもしれませんが、生地がゆるい(水分量が多い)と、ベタベタしてしまい、手で丸めたり形を整えたりするのが本当に難しいんです。
もちろん、成形できるくらいの固さに調整することは簡単でした。実際に、扱いやすい固さの生地でも何度か試作をしてみました。でも…どうしても、私が思い描くドーナツにはならなかったのです。
確かに、ふわっとしていて美味しい。でも、どこか「パン」なんですよね。ドーナツ特有の、あのサクッとした歯切れの良さや、じゅわっと広がるジューシーさ、そしてスッと消えていくような口どけが足りない。どうしても、”ドーナツ風のパン”の域を出ませんでした。
「これじゃない…!」
何度も試作を繰り返す中で、美味しさと扱やすさは反比例の関係にあることに気づきました。口どけを良くしようとすればするほど、生地はデリケートでゆるくなっていく。まさに、美味しさとのトレードオフです。
この「ゆるゆる生地」をどうやって製品化するか。それが、今回の試作で最も頭を悩ませた部分であり、私たちの挑戦でした。
「焼き」なのに「揚げ」のようなジューシーさの秘密
「ドーナツといえば、油で揚げたものでしょ?」
そう思われる方がほとんどだと思います。確かに、揚げドーナツのあのジュワッとした食感とコクは、抗いがたい魅力がありますよね。
でも一方で、「カロリーが気になる…」「食べた後、ちょっと胃がもたれる感じが…」というお声もよく耳にします。
そこで私が選んだのが、油で揚げるのではなく、オーブンで焼き上げる「焼きドーナツ」という製法です。
一般的な焼きドーナツは、ヘルシーであっさりしている分、揚げドーナツのような「ジューシーさ」や「満足感」に欠けることがあります。
「ヘルシーさは魅力だけど、やっぱりドーナツらしい美味しさも諦めたくない!」
そんなわがままを叶えるために、私たちは一工夫加えました。
それは、ドーナツの表面に、特製のオイルをかけて焼き上げるという焼き方です。
例の「ゆるゆる生地」は、実はこの工程でこそ真価を発揮します。きめ細かく、口どけが良い生地だからこそ、オイルを程よく吸い込んでくれるんです。
これにより、表面は揚げドーナツのようにジュワッとしたリッチな風味がありながら、中はパン生地なので油を吸いすぎていない。だから、食べていても脂っこさやしつこさを感じることなく、最後まで美味しく召し上がっていただけるはずです。
まさに、揚げドーナツと焼きドーナツの”いいとこ取り”!
この絶妙なバランスこそが、「ひとぱん工房」の新しいドーナツの最大の秘密なんです。
ドーナツの形、どうなる?究極の選択
さて、味と食感の方向性は固まりましたが、実はまだ解決していない問題があります。
それは、ドーナツの「形」です。
先ほどお話しした通り、生地がとってもゆるいので、皆さんが思い浮かべるような、真ん中に穴のあいたリング状に成形するのが、本当に至難の業なんです。
今のところ、効率よく、そして生地の良さを損なわずに作れるのは、穴のない丸い形。コロンとしていて、これはこれで可愛いかな、なんて思っています。
でも、やっぱり「ドーナツ」と聞くと、あのリング状を期待しますよね…?
もしかしたら、発売当初はシンプルな丸いドーナツとして登場し、製造方法をさらに研究して、将来的にはリング状のドーナツもお披露目できる日が来るかもしれません。
あるいは、このまま「ひとぱん工房」のドーナツは、あえて穴のないドーナツとして、皆さまに愛していただく形になるのか…。
これは、もう少しだけ、私たちの工房内での検討にお付き合いいただければと思います。どんな形で登場するか、ぜひ楽しみにしていてくださいね。
究極のホイップドーナツも登場予定!?
そして、プレーンな焼きドーナツに加えて、もう一つ、絶対に美味しい「お楽しみ企画」を考えています!
それは、ドーナツの中に、たっぷりのホイップクリームを絞った「ホイップドーナツ」です!
想像してみてください。
ジュワッと食感のドーナツ生地の中から、ひんやり、ふわふわのミルキーなホイップクリームがとろり…。これはもう、間違いなく幸せの味です。
ただ、一つだけこだわりたいことがあります。
それは、クリームの「鮮度」です。
生クリームはとてもデリケートで、常温で長時間置いておくことができません。常温で置いておくと、どうしてもクリームがゆるくなってしまいます。
そこで、「ホイップドーナツ」は、お客さまからご注文をいただいてから、その場でクリームを絞ってご提供するスタイルにしようと考えています。
レジにお持ちいただいたドーナツを、一度工房にお預かりし、新鮮なクリームをたっぷりと詰めさせていただきます。少しだけお時間をいただきますが、その分、最高の状態で召し上がっていただけることをお約束します。
考えただけで、よだれが出てきちゃいますね(笑)
こちらも、ぜひご期待ください!
まとめ
今回は、開発中の新作「焼きドーナツ」について、たっぷりと語らせていただきました。
「お菓子のような口どけ」を目指して試行錯誤を重ねた、ゆるゆるの繊細な生地。
「焼き」と「揚げ」のいいとこ取りをした、ジュワッとあっさりな新しい食感。
私たちのこだわりと挑戦が詰まった、自信作になりそうです。
近いうちに、必ず店頭に並べてみせますので、お店にお立ち寄りの際は、ぜひこの新しい仲間を手に取ってみてください。
これからも「ひとぱん工房」は、皆さまの日常に、ささやかな幸せと笑顔をお届けできるようなパン(そして、ドーナツも!)を焼き続けていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!