パン屋の職場環境とコンプライアンスについて
パン屋さん向けの講習会に参加してみて
講習講師の方のお店の売れ筋商品を惜しみなく教えてくださりました。
配合と作り方と流れ、成形から焼きまで。最後は焼き立てのパンもいただいたりして、至れり尽くせりでした。
自分のところの強みとか売りを他社にシェアすることは、ライバルが増えちゃうわけで、自分の店舗の売上が落ちるかもしれないという可能性もあるじゃないですか。
それなのに、「持って帰れるもの(情報)は、どんどん持って帰ってや!」という感じで、その講師の方の器の大きさに驚きました。
講師の方は70歳くらいだったんですけど、昭和の時代をワンマン社長として生きてきた人っていうんですかね。
言葉はキツめで、私も久しく触れた職人の空気感でした。
ジャム兄:根性論みたいな感じ?
そうですね。叩き上げの職人って感じでありながら、経営手腕もある、というパワフルな方です。
講習会という場所で、怒って、怒鳴って、スタッフを引っ叩いてました。(笑)
もう第一線を退かれてる感じではあるみたいなんですけど、厳しさは伝わりつつ、でも同時にすごい愛情も伝わるという感じです。
何事も自分で気づいて、覚えてできるようになるっていうのが一番身にはなるんですけど、「違うだろーっ!」て怒ってくれて、こうでもない、あーでもない、って指導してくれると、学べるスピードは一気に早くなるわけで。
人にも寄ると思いますが、言われても素直にやらない人は成長も遅いんですが、素直に受け取って頑張る人は、本当に成長すると思います。
でも、今はなかなか厳しいことを言う人が少ないと言いますか。
言った人が処罰を受けるような状態だと思います。
時代の変化ですね。
パン業界のコンプライアンスについて
ひとぱん工房は、とても優しく、ゆるいですよ。
というのも、「本気でパンを学びたい」という方が今はおらず、スタッフの皆さんにお手伝いしてもらってる状況なので、厳しく技術のあれこれを押し付けるのは違うと思っているからです。
でも、パンを学びたい人には、私はとことん熱く、向き合うタイプですよ。(笑)
ジャム兄:ひとみ店長が最初に就職したフランス料理店は、厳しかったのですよね?
はい。まさに、バブル全盛期に活躍したシェフがオーナーのお店でしたし、私も料理を学ばせてもらうという立場で働いておりましたので、女でも怒られるし、どつかれましたよ。
ジャム兄:ひどい…。今は考えられないです
私が修行始めた頃は、そんなもんです。
それが普通のことです。
もしかしたら、今も個人店とかではそのような教育はあるのかもしれないんですけど。
大手のパン屋さんになっていくと、コンプライアンスが確立してまして、スタッフが上司とかチーフに分からずに上層部に伝えられる手段っていうのもあったりして。
会社も、自社を守るためにそういうシステムになってきたようです。
私も大手のパン屋さんで働いていた頃は、まだまだ自己コントロールができず、暴言を吐いたり、部下をいじめてしまうチーフはいました。
結果、左遷されてましたが。
厳しい言葉を使うとか、そこに愛があれば私は全然いいんじゃないかなって思うんですけどね。
でも、やっぱり人によっては捉え方が変わってしまったり、愛情が見えず、上司の感情的なものでやってしまってるっていうこともあると思うんですけど。
今はとにかく大手パン屋はホワイト化に力を入れていると思います。
なるべく技術持ってる人には辞めてほしくないけど、時代的にはコンプライアンスも重視する。
企業側は、生き残るために、なんとか頑張ってるわけですね。
ひとぱん工房の教育論
ジャム兄:ひとみ店長的にはスタッフに接するときは、何か気をつけてることとかある?
感情を全面に出すのはダメ、と思っております。
人間なので、感情はあるのですが、機械のように押し殺すのではなく、あくまでも「本人の為」という感情を原動力に、どうすればできるようになるか?どうすれば伝わるか?を、ワンテンポ考えてから、発言してます。
考えずに、感情のまま言葉を出すと、口から出るのは「なんでできないの?」とか、人格否定の言葉とか、面倒くさいという気持ちが強ければ「もうやらなくていいわ」とかが、出てしまうんですよね。
どれも、本当に本人にとってなんの足しにもならないことばかり。
言いたいこと言うのは、教える立場からすると、簡単でスッキリするんですけど、スタッフがその作業をできるようになることがゴールなので、湧き出る感情はワンテンポ置いてから伝えることを心がけています。
決して溜め込むという意味ではありません。
「ここまでできてるなら、あと少しこうしよう」とか、「こうなるにはどうしたらいいと思う?」とか言います。
人間なんでね、何回も失敗するじゃないですか。
「何回失敗すれば気が済むの?いい加減覚えようよ」と、私はよく修行時代に言われたのですが。
私自身、今それは「それをやりたいと思って働いてるスタッフ」にしか言いません。
スタッフが「覚えるために頑張っている」というゴールの認識が取れるから、「やってない=本気か?本当にやりたいのか?」という根本的な話ができるわけです。
バイトさんとかは、パンを学びたくてやってるわけではないので、その言葉で奮起できないことが多いんですよね。
だいたいは傷ついたり、自信を失っちゃったり、なんでこんなこともできないんだろうって、思っちゃうことが多いので、私はすごく冷静に、できると信じてるから何度も同じこと言うようにしています。
あとは明らかにちょっと技術的に難しすぎて、やらせることではないって判断したらやらせないですね。
誰でも作れるマニュアルっていうのも追求していけばいいかもしれないんですけど、やっぱり技術っていうものを持っている人が作れるものっていうのに価値があると思いますからね。
話は戻りますが、その講習会で怒られているスタッフさんを見て、懐かしいなって思いました。
「ひとみ店長も修行時代こんな環境だったな」っていう懐かしい感覚です。
耐え抜いた人だけが技術だけじゃなく自信とか、根気とか、も得られる。
こういう経験できた人は独立した時に、メンタルが一つの武器となっていると思います。
私自身、今は独立して、自分が厳しく指導する環境を作ってないので、あまり触れることがなかったんですけど、久しぶりに触れて本気で怒ってくれる人がいるっていいなって、思いました。
そんな時代でもないとも思うんですけど、やっぱり怒るのもエネルギーがいりますからね。
とにかく全ての今の私にしてくれた存在に感謝です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。