パン屋さんが本気で検証!惣菜パンがもっと美味しくなる黄金比は?~素材を変えて食べ比べてみました~
今回は、お店で人気の惣菜パンの生地をもっと美味しくできないかな?と思い立ち、いくつかの試作にチャレンジしてみました。パン作りって、本当に奥が深いですよね。ほんの少し材料の配合を変えるだけで、食感や風味がガラッと変わるんです。
この記事では、
- 油脂の量を増やしたらどうなる?
- 水分量を高めたら?
- 薄力粉を混ぜるとどう変わる?
- 牛乳仕込みにしたら?
- 話題のライススターチを入れたら?
といった疑問を解消すべく、実際に試作して食べ比べてみた結果を、私の素直な感想と共にお届けします。パン作りのヒントを探している方や、パン選びにもっとこだわりたい!という方の参考になれば嬉しいです。
いつもの惣菜パン生地をベースに、いざ実験開始!
私のパン作りは、どちらかというと知識よりも実践派!「こうしたらどうなるんだろう?」という好奇心から、実際に作って、食べて、学んでいくスタイルです。
「ひとぱん工房」の惣菜パン生地は、実はとってもシンプル。基本的には1種類の強力粉を使い、その日の気温や湿度に合わせて微調整しながら作っています。このままでももちろん美味しいのですが、「もっと口どけを良くしたいな」「さらに風味豊かにできないかな」と、欲張りな私はついつい考えてしまうんです。
今回は、この基本の生地をベースに、いくつかの素材や配合を変えて、その変化を検証してみました。どんな発見があったのか、ドキドキしますね!
実験1:油脂の量を増やしてみたら?~リッチな風味としっとり感への期待~
まず最初に試してみたのは、油脂の量を増やすこと。
普段、惣菜パンの生地には油脂を2%配合しているのですが、これを6%にしてみました。
さて、どんな変化があったと思いますか?
食べてみた感想は…「ふわふわ、しっとり!」
一口食べてみると、まず驚いたのがそのふわふわ感!そして、口の中で感じるしっとりとした食感。やっぱり油脂が増えると、パンはリッチな風味と柔らかさが増しますね。
この生地なら、シンプルな具材でもパン自体の美味しさが引き立ちそうです。例えば、ハムやチーズを挟むだけでも、いつもよりちょっぴり贅沢なサンドイッチになりそう!
ただ、引き(パンをちぎった時の伸びる感じ)は、いつもの生地より少し弱くなったかな?という印象でした。 もちもち感というよりは、口どけの良さとしっとり感が際立つパンになりました。これはこれで、とっても美味しい発見です!
実験2:高加水に挑戦!~水分量がパンに与える魔法~
次に挑戦したのは、水分量を増やすこと。パン作りにおける「加水」とは、粉に対して加える水分の割合のこと。一般的に、加水率が高いパンは、もちもちとした食感になりやすく、老化(パサつくこと)も遅らせる効果があると言われています。
普段の惣菜パン生地の加水率は74%なのですが、今回はこれを80%にアップしてみました!
世間では85%以上、中には100%を超えるような「超高加水パン」も話題ですよね。私の中では80%でも結構な高加水かな?と思ったのですが、どうでしょうか。
食べてみた感想は…「食べやすい!まさに高加水パンの魅力」
見た目は、油脂6%のパンよりもさらにふっくらと膨らんでいて、見るからに柔らかそう。
実際に食べてみると…「うん、食べやすい!」
これはまさに、私たちが都内のベーカリー巡りをした時に「これぞ高加水パンだね!」と話していたような、みずみずしくて口どけの良いパンに近い食感です。
ただ、ものすごく劇的な変化!というほどではなかったかもしれません。80%だと、まだ「高加水パン」の入り口くらいなのかな? でも、確実に食べやすさは格段にアップしました。このパンなら、何もつけずにそのままで、生地本来の美味しさを楽しみたいですね。
実験3:薄力粉を50%配合!~グルテンを抑えたらどうなる?~
パン作りの主役といえば強力粉ですが、お菓子作りによく使われる薄力粉を混ぜたらどうなるんだろう?というのも、試してみたかったことの一つ。
強力粉はグルテン(タンパク質の一種で、パンの骨格を作る)が多く、パンにコシや弾力、いわゆる「引き」を与えます。一方、薄力粉はグルテンが少ないため、お菓子のようなサクッとした軽い食感や、きめ細かい生地を作るのに向いています。
今回は、いつもの強力粉100%の生地に対して、強力粉50%・薄力粉50%の割合で作ってみました。 より引きをなくして、口どけを追求できるかな?という狙いです。
食べてみた感想は…「うーん、これはちょっと…」
まず、生地の扱いの段階で、これが一番ベタベタでデロデロの生地になってしまいました…。 成形が難しかったです。
そして焼き上がり。確かに、パンをちぎった時の引きはほとんどありません。 狙い通りではあるのですが…。
肝心の味と食感はというと…ごめんなさい、正直に言うと、これが一番美味しくなかったです。
なんだろう…お餅に近いような、でもお餅ほど美味しくはない、不思議な食感。口の中で噛んでいるのに、うまく噛み切れないような、もそもそとした感じが残ります。 例えるなら、味はパンなのに、食感は柔らかくしたタピオカ…みたいな(笑)
香り自体は、国産の薄力粉を使ったので悪くないのですが、いかんせん食感が物足りない。
そして、この薄力粉50%のパンだけ、焼き色がほとんどつかなかったんです。 白っぽい仕上がりでした。これは、糖分が少ないか、メイラード反応(糖とアミノ酸が加熱によって褐色に変化する反応)が起きにくかったのかもしれません。
惣菜パンとして、例えばソーセージなどを乗せてみても、ちょっと生地が負けてしまいそうな印象でした。 これは、ひとぱん工房のパンとしては、ちょっと違うかな、というのが正直な感想です。
実験4:牛乳仕込みに挑戦!~乳のコクはプラスされる?~
お次は、仕込み水の一部を牛乳に置き換えてみました。 牛乳に含まれる乳脂肪やタンパク質が、パンにどんな影響を与えるのでしょうか?
以前、バターと卵をたっぷり使ったリッチなパン「ブリオッシュ」の試作もしましたが、今回はバターも卵も入れず、純粋に牛乳の力を検証します。
水分量は基本の74%に戻し、仕込み水のうち、水2に対して牛乳1くらいの割合で配合しました。
食べてみた感想は…「いつものパンに近いけど、後味にほんのり乳の風味」
見た目や香りは、そこまで大きな変化はないかな? 食べてみると、これが一番いつもの「ひとぱん工房」の惣菜パンに近いかも!と感じました。
ただ、噛みしめて、飲み込んだ後の後味に、ほんのりと牛乳独特のコクというか、乳っぽさが口の中に残る感じがします。 まるで牛乳を飲んで3分後くらいの、あの感じです(笑)。
引きもしっかりあって、食べ応えも十分。 これはこれで美味しいのですが、牛乳を入れなくても、いつものパンで十分美味しいかな?というのが正直なところ。もしかしたら、牛乳の量が少し少なかったのかもしれません。
牛乳にも脂肪分が含まれているので、ベースの油脂2%に加えて、牛乳由来の脂肪分もプラスされていることになります。 その影響もあって、しっとり感はあったのかもしれませんね。
実験5:ライススターチを10%配合!~米粉の力でもっちり新食感?~
さあ、最後の実験は、最近注目されているライススターチです!ライススターチとは、お米から作られたデンプンのこと。いわゆる米粉の一種ですね。これをいつもの惣菜パン生地に10%(ベーカーズパーセントで小麦粉に対して10%)加えてみました。
米粉を使ったパンは、独特のもちもちとした食感が人気ですよね。ライススターチを加えることで、どんな変化があるのでしょうか?
食べてみた感想は…「もっちり!これは新しい可能性!」
一口食べると、明らかにもっちり感がアップしています! いつもの小麦のパンとは少し違う、米粉パンに近いような独特の弾力と歯ごたえを感じます。
風味自体は、そこまで大きく変わらない印象です。 でも、このもっちりとした食感は魅力的!
面白いことに、ライススターチを加えた生地は、水分をぐんぐん吸ってくれるんです。 いつもと同じ水分量でも、生地がベタつかずに扱いやすかったんですよ。ということは、ライススターチを使って高加水にしたら、しっとりもっちりで、さらに美味しいパンができるんじゃないか…!?と、新たな可能性を感じました。
これは、翌日になってもパサつきにくいかもしれませんね。その変化も見てみたいところです。
検証を終えて…見えてきた「美味しい」の秘密
さて、5種類の試作パンを食べ比べてみて、私なりに感じたことがあります。
それは、パンの美味しさって、食感がものすごく重要なんだなということ。
もちろん風味や香りも大切ですが、口に入れた時の柔らかさ、しっとり感、もっちり感といった「食べやすさ」が、美味しさの体感に大きく影響するんだと改めて実感しました。
今回の試作では、特に油脂分と水分量が多いパンが、素直に「美味しい!」と感じやすかったです。 食べた時の「ふわっ」「しっとり」「もちっ」という食感が、脳に「これは美味しいものだ!」と指令を送るのかもしれませんね。
以前、ドーナツの試作をした時も、味が良くても生地がパサパサ、モソモソしていたら、どうしても「うーん…」となってしまった経験があります。 やっぱり、口どけの良さや、噛み心地、飲み込みやすさといった「食べやすさ」は、美味しさを感じる上でとっても大切な要素なんですね。
人は本能的に「消化しやすいもの」を美味しいと感じる?
ふと、こんなことも考えました。
人間って、昔から木の実や草などを食べてきた歴史の中で、消化しやすいものを「美味しい」と本能的に選んできたのかもしれないなって。
例えば、食物繊維が豊富な野菜も、よく噛まないと消化しにくいですよね。リンゴの皮や玄米も、栄養価が高いと分かっていても、食べやすさを優先して皮を剥いたり精米したりすることがあります。
パンも同じで、消化しやすそうな、口どけの良い食感のものを、脳が「美味しい」と判断しているのかもしれません。なんだか、パン作りを通して、人間の本能にまで思いを馳せてしまいました(笑)。 深いですね!
まとめ:さらなる美味しいパンを目指して!
今回の試作は、私にとってたくさんの発見と学びがありました。
特に、ライススターチと高加水の組み合わせは、新しい「ひとぱん工房」の惣菜パンへの道を切り開いてくれそうな予感がしています!
もちろん、今の惣菜パンも自信を持って美味しい!と提供していますが、現状に満足せず、もっともっとお客様に喜んでいただけるパンを追求していきたいと思っています。
今回の実験結果を踏まえて、また新たな試作にチャレンジしてみますね!
皆さんも、もしパン作りをされるなら、ほんの少し材料を変えてみるだけで、新しい美味しさに出会えるかもしれませんよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
これからも「ひとぱん工房」をどうぞよろしくお願いいたします!