2026年ひとぱん工房始動!東松戸店オープンに向けた厨房機器の秘密と「パン屋の裏側」を大公開
- 2026年の幕開けと決意:宮城の山奥から、東松戸店オープンに向けた意気込みと、現在進行中の緻密なシミュレーションについて語ります。
- 新兵器・オーブンの秘密:従来の「デッキオーブン」に加え、新たに導入する「コンベクションオーブン」の違いと、それぞれの特性を生かした焼き分け戦略を解説。
- 「ドゥコン」と生産革命:生地の保管場所(番重)の計算や、温度管理を自動化する「ドゥコン」を駆使した、効率的かつ高品質なパン作りの計画。
- 職人技からシステムへ:「見て盗め」の時代から脱却し、マニュアル化と最新機器(ベーキープロ)の導入で、スタッフ全員が安定して美味しいパンを焼ける体制づくり。
あけましておめでとうございます!2026年の幕開けは宮城から
みなさん、あけましておめでとうございます!ひとぱん工房の店長、ひとみです。
2026年、ついに新しい年が始まりましたね。
私は今、お正月休みを利用して宮城県に帰省しています。
みなさんはどのようなお正月をお過ごしでしょうか?
私はというと、温泉でゆっくり……と言いたいところですが、頭の中はあと3ヶ月弱に迫った東松戸店のオープンのことでいっぱいです!
お休みをいただいてはいますが、1日たりとも無駄にせず、朝から晩まで新店舗の計画をネリネリと練り続けています。
長年準備してきたひとぱん工房 東松戸店。いよいよ形になる時が来ました。
今回は、そんなオープン直前の私の頭の中にある「パン屋の厨房設計」や「製造シミュレーション」の裏側を、少しマニアックに、でも分かりやすくお話ししたいと思います。これからパン屋さんを目指す方や、パン作りが好きな主婦のみなさんにも、「へぇ~、パン屋さんの裏側ってこうなってるんだ!」と楽しんでいただければ嬉しいです。
新店舗の心臓部!「コンベクション」と「デッキ」の違いとは?
今回の移転リニューアルで一番大きく変わること。それは「焼成能力(パンを焼く力)」の劇的な向上です。
以前の曽谷店では、デッキオーブンというタイプのオーブンを使っていました。
しかし、新しい東松戸店では、これに加えてコンベクションオーブンを2台導入します。
ここで少し、パン作りに詳しくない方のために、この2つのオーブンの違いをご説明しますね。これを知っていると、パン屋さんでパンを見る目が少し変わるかもしれませんよ。
1. 職人の味方「デッキオーブン」

デッキオーブンは、いわゆる「石窯」の現代版のようなものです。
- 特徴:上下からの熱(伝導熱・輻射熱)でじっくり焼きます。
- 得意なパン:食パンやバゲット、菓子パンなど。底面もしっかり焼けるので、パンの直焼きに向いています。
- メリット:扉の開け閉めをしても庫内の温度が下がりにくく、途中で焼き加減を見ながら出し入れするような調整(「あと2分追加!」など)がしやすいです。
2. スピードと効率の「コンベクションオーブン」

ご家庭にあるオーブンレンジの超巨大・高性能版だと思ってください。
- 特徴:熱風(ファン)を庫内に循環させて焼きます。
- 得意なパン:クロワッサンやパイなどのサクサク系、または小型のパンを大量に焼くこと。
- メリット:一度に大量のパンを均一に焼くことができます。新店舗では1台につき天板5枚、2台で10枚を一気に焼成可能です。
なぜ2種類を使い分けるのか?
曽谷店の時は、最初はデッキオーブンだけで全てのパンを焼いていました。しかし、新店舗では生産量が格段に増えます。
コンベクションオーブンは、一度スイッチを入れたら「開け閉め厳禁」に近い運用になります。途中で扉を開けると熱風が逃げてしまい、温度が一気に下がってしまうからです。
つまり、「入れて、焼いて、出す」を一発勝負で決める必要があります。
「焼けたかな?もう少しかな?」と覗きながら焼くスタイルではなく、プログラムされた時間と温度できっちり焼き上げる。これがコンベクションの戦い方です。
- デッキオーブン:微調整が必要な繊細なパンや、少しずつ焼いていくパン。
- コンベクション:大量に、一気に焼き上げる主力商品。
この「ハイブリッド体制」で、焼きたてのパンを途切れることなくみなさんにお届けしたいと考えています。
頭の中でパンを焼く?「番重(ばんじゅう)」テトリスの悩み
今、私が一番頭を悩ませているのが、「シミュレーション」です。
新しい店舗、新しい機材、そして増えたスタッフ。これらが実際に動き出した時、厨房の中で何が起こるのか?それを脳内で必死にシュミレーションしています。

特に重要なのが「番重(ばんじゅう)」の管理です。
番重とは、パン生地を入れておく平たい箱のこと。パン屋さんで積み重なっているのを見たことがあるかもしれませんね。
生産量の限界を見極める
新店舗では、コンベクションオーブン2台とデッキオーブン1台がフル稼働します。
単純計算で、一度に焼ける枚数は以前の倍以上。プラス12枚分ほどの天板が一気に焼けるようになります。
ここで問題になるのが、「焼く前の生地をどこに置いておくか?」です。
パン作りには「発酵」という時間が必要です。
- 生地をこねる
- 冷蔵庫で寝かせる(オーバーナイト法など)
- 成形する
- 発酵させる
- 焼く
この工程の中で、生地がのった「鉄板」は厨房内を旅します。
冷蔵庫に何個入るのか?
作業台には何個置けるのか?
発酵機(ホイロ)には何個入るのか?
もし、「焼く能力」だけ高くても、「生地を保管する場所」がなければパンは作れません。
逆に、保管場所があっても、焼くのが追いつかなければ発酵しすぎて(過発酵)ダメになってしまいます。
「この番重をこっちに移動して、空いたスペースに次の生地を入れて……」
まるでテトリスのように、頭の中で箱を動かし続けています。
「本当に回るのかな?」「冷蔵庫のスペース、足りるかな?」
昨日の夜も、そんな不安と期待が入り混じったシミュレーションをしていました。こればかりは、実際にやってみないと分からない部分もありますが、準備の段階でどれだけ詰められるかが勝負です。
「見て盗め」はもう古い?最新機器とマニュアル化への挑戦
ひとぱん工房は、私ひとりで始めた小さなお店でしたが、ありがたいことに今では頼もしいスタッフがたくさん増えました。
新店舗オープンに向けて、さらに新しい仲間も加わっています。
そこで重要になるのが、「人材育成」と「味の均一化」です。
職人の勘をデータ化する
昔ながらのパン屋さんのイメージと言えば、「背中を見て覚えろ」「温度は肌で感じろ」といった職人気質の世界かもしれません。
もちろん、そういった感覚は最終的には大切ですが、お店を安定して運営し、いつ来ても同じ美味しさを提供するためには、それだけでは不十分です。
新店舗では、ツジ・キカイさんの「ベーキープロ」というコンベクションオーブンを使います。
これは、焼成のプログラムを細かく設定できる優れものです。
- 最初の5分は200度でスチームを入れる。
- 次の10分は180度でファンを弱める。
- 最後の3分はダンパー(排気)を開けてパリッとさせる。
こういった複雑な工程を記憶させることができます。
人間だと、「あ!温度下げるの忘れてた!」「タイマー押し忘れた!」というミスがどうしても起こります。焦げたり、生焼けだったり……。
でも、プログラムがあれば、ボタン一つで理想とする焼き上がりを再現してくれるのです。
「リセット問題」との戦い
ただ、面白いことに機械にも「癖」があります。
例えば、焼いている途中で「やっぱり焼き色が薄いからあと2分追加しよう」と思って時間を延長したとします。
そのあと、うっかりそのまま次のパンを入れてスタートボタンを押すと……
「前の設定(延長した状態)」が残っていて、プログラムが最初から始まらない!なんていうトラブルも(笑)。
電子レンジで「あたため」を押したつもりが、前の設定が残ってて……みたいな経験、ありませんか?
オーブンでもそれが起きるんです。「あちゃー!リセットされてなかった!」と慌てないように、操作手順もしっかりマニュアル化して、誰が操作しても安全に美味しく焼けるように準備しています。
「ドゥコン」が変えるパン屋の朝と、主婦の働き方
もう一つ、新店舗の大きな武器となるのが「ドゥコン(ドゥコンディショナー)」です。
これは、パン生地の温度管理を自動で行ってくれる、魔法のような冷蔵庫です。
ドゥコンのすごさ
通常のパン作りは、朝早く起きて生地をこね、発酵を待って……と時間がかかります。
しかし、ドゥコンを使えば、
- 前日に生地を作って入れておく。
- 夜中は「低温(マイナス度帯など)」で発酵を止めて保存(リタード)。
- 朝方の指定した時間になると、自動で温度が上がり「発酵(ホイロ)」が始まる。
- スタッフが出勤する頃には、「あとは焼くだけ」の状態で生地が待っている!
この機械のおかげで、パン屋特有の「超早朝出勤」を緩和できたり、朝一番から焼きたてのパンをたくさん並べることができたりします。
4室独立制御で効率アップ
新店舗には、このドゥコンの機能を持つ部屋(室)が4つあります。
それぞれ独立して温度設定ができるので、
- 部屋A:クロワッサン用に冷やしておく
- 部屋B:食パン用に発酵を進めておく
- 部屋C:フランスパン用に低温でじっくり熟成させる
といった使い分けが可能です。
これにより、「開店と同時に食パンも菓子パンもハード系も揃っている」という状態を目指せます。
「美味しい」の裏にある緻密な計算
パン作りは、粉と水と酵母が織りなす生き物のような世界ですが、それを商売として、毎日数百個、数千個と安定して作るためには、数学的な計算と物理的な管理が欠かせません。
- コンベクションオーブンの熱風効率。
- デッキオーブンの蓄熱性。
- 冷蔵庫の容積と番重のサイズ。
- スタッフの動線と作業時間。
これらをパズルのように組み合わせ、最適解を見つけ出すのが、今の私の仕事です。
正直、計算通りにいかないことも多々あります。「生産量が多すぎるかな?」「いや、足りないよりはいい!」と自問自答の日々です。
でも、「お客様をがっかりさせたくない」「欲しいパンがいつでもあるお店にしたい」という想いが、この原動力になっています。
2026年、東松戸でお待ちしています!
曽谷店での営業は1月18日で終了しますが、それは終わりではなく、新しい始まりへのステップです。
これまでの経験と、新しい設備、そして成長したスタッフたちと共に、ひとぱん工房は次のステージへ進みます。
オープンまであと3ヶ月弱。
不安もありますが、それ以上にワクワクしています。
「パンが焼けるまでの流れ」を整えることは、お客様に「スムーズに美味しいパンをお渡しする」ことに直結します。
主婦のみなさんが忙しい朝や、ほっと一息つきたいおやつの時間に、私たちのパンが寄り添えるよう、準備にラストスパートをかけていきます!
具体的なオープン日や場所の詳細は、各種SNS(InstagramやX)でも随時発信していきますので、ぜひチェックしてくださいね。
2026年も、ひとぱん工房をどうぞよろしくお願いいたします。
新しくなった東松戸店で、焼きたての香りと共にみなさんにお会いできる日を楽しみにしています!
【追伸】
「マニュアル作り」……実はこれが一番大変だったりします(笑)。
でも、スタッフのみんなが楽しく働ける環境を作るためなら、頑張ります!




